‐
あいなと龍河は、同じソーシャルゲームで遊びながら、こうして冗談を言い合うのが常になっている。
「龍河、友達は大切にするんだぞ。と、姉らしいことを言ってみる今日この頃」
「うん、たしかに姉らしいな、珍しく。
つか、なるほどね。失恋直後ってことで今朝は沈んだ気分だったけど、学校で秋葉さんに励まされて気分上昇させて現在に至る、ってワケか」
「鋭いね、君は」
わざとおどけた口調で、あいなは言った。
「っていうか、前から言ってることだけど、いつまで秋葉のことサン付けで呼ぶ気~?昔からの知り合いなんだから、いい加減親しみ込めた呼び方してもいいんじゃない?何、気ィ遣ってんの?龍河のクセに」
「俺様だから気を遣ってんだよ。たしかに俺は何度か秋葉さんに会ってるし口もきいたことがある。ただな、秋葉さんは、姉ちゃんだけでなく俺にとっても特別な存在なんだよ。気心知れてるからって、呼び捨てにしていい女子高生じゃない」
いつも冗談であいなをからかう時のように飄々とした物言いをする龍河である。学校では同性の友達も何人かいて彼らと楽しく交流しているみたいだが、家では淡々としゃべる察しのいい十五歳男子。
あいなは、弟の頭の良さや洞察力の高さにたびたび驚かされる一方、何度も顔を合わせている秋葉に対してかしこまった言動をとる彼のことを理解できずにいた。龍河にとって、秋葉の方が三つ年上とはいえ、かしこまりすぎだと思う。
ただそれだけのことならあいなもこうして口を出したりしないのだが、時々学校で、秋葉がそのことを気にしているから、気にとめざるをえないのだ。
『龍河君ってさー、何で私に敬語使うんだろ?私達は何度か会ってるし、私にとっても龍河君は弟みたいなものだから、あいなに接するみたいに気軽にしてくれればいいのに。私、何か嫌われることしたかなー?』
親友にそんなことを言われたら、あいなも大人しくはしていられない。
秋葉の憂いを晴らすべく、あいなは改めて龍河を諭した。
「龍河が秋葉のこと大切に考えてくれてるのは、私も嬉しいよ。でも、秋葉本人は、もっとはっちゃけた感じで龍河と仲良く話したいみたいだよ。変に気を遣わず、もっと仲良くしたいんじゃないかなー?」
「仲ならもう良いじゃん。秋葉さんと俺、ラインとかメアドも交換してるし」
「現代っコ的返しだな、ううむ……」
「姉ちゃんもバリバリ現代っコだろ。秋葉さんは俺にとって親愛なる家族の親友なんだから、敬意を持ちながら接するのは当たり前でしょ?」
当然のことを今さら言わせないで、と言うように、龍河は片手をひらひらさせた。
「親愛なる家族の親友、ねー……。龍河がそういうこと言うと、限りなくウソくさいんだよねー……」
「冗談のフリして本音を言う時もある。姉ちゃんとしては秋葉さんの意見を優先させたいんだろうけど、俺の意思もちょっとは尊重してよね。だいたい、姉ちゃんはつまんないこと気にしすぎ。別にどうってことないことじゃん。こんなことで仲が悪くなるほど、秋葉さんと姉ちゃんの関係は浅くないでしょ」
「それはそうだけど……。でもさぁ」
「はいはい。この話は終わり。それよりも、姉ちゃんは次の恋を成功させる特訓でもしたら?試しに乙ゲー(乙女ゲームの略)やって、男の心理を読むコツをつかむとかさ」
「乙ゲーか。ちょっと興味あるけど、あんなの、選択肢次第でどうにでもなるじゃん。リアル男子をオトすには役立たないと思う」
「まあ、あれは一種の娯楽ゲームだからな。分かってんなら、秋葉さんの勧めてくれた恋愛マニュアル、少しでも頭に叩き込んだら?そしたら、ちょっとはマシな感じに進行するんじゃない、姉ちゃんの恋もさ」
「うう……。イタイとこを突くなぁ。反抗期か、君は」
「まあ、十五歳だしね。一般的には第二次成長期の訪れによる反抗期まっさかりな年齢だな」
延々続きそうなボケツッコミトークを適当な所で切り上げると、スマホ版ソーシャルゲームのブラウザ画面を終了させ、あいなは自室に引っ込んだ。