表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/104


 恋は不運続きで、その記録は更新を止める気配がないけれど、友情には恵まれ充実している。

 秋葉に話を聞いてもらったおかげで、あいなの元気度は9割方わりがた回復した。


「たっだいまー!」


「姉ちゃん、おかえり。今日はバイト休み?」


「うん!」


 学校から帰ると、あいなの弟・神蔵かみくら龍河りゅうがが、リビングであいなを出迎えた。


 今年中学三年生になった弟・龍河は、帰宅部ゆえ、電車通学のあいなよりも先に帰宅していることが多い。彼は、スマートフォン片手に、棒状アイスを食べていた。


「春になったとはいえ、アイスなんか食べたら寒くない?」


「アイスは季節問わずおいしいから」


 龍河は無類の甘党で、特にアイスが大好物なのである。それが分かっているのに、弟が薄着でアイスを頬張る姿を見るとこちらが寒くなるので、あいなはつい、そんなことを尋ねてしまうのだった。


「これからゲーム?」


「うん。ギルドメンバーの人達、みんなin(イン)してるから」


 インしている、とは、ゲーム仲間がゲームサイトにログインしゲームに参加している……という意味である。あいなも、少し前から同じゲームをやっていた。


「じゃあ、私もinしよっと。せっかくバイトが休みで、時間もあるしね」


 ソーシャルゲームの話だった。この神蔵姉弟きょうだいは、二人そろってゲーム好きである(龍河に誘われてあいなが引き込まれる、というパターンがほとんど)。

 はじめのうちは面倒に感じたオンラインネットゲームも、龍河と一緒にプレイするうちに、あいなは面白いと思うようになった。



「そういえば姉ちゃん、今朝より元気になったな」


「えっ、そう!?」


「うん。今朝は、この世からゲームが消失した並みに暗い顔してた」


「マジか。っていうか、その例えはおかしくないかい」


 ツッコミを入れつつ、あいなは内心ドキッとしていた。今朝の自分は、片想い連続連敗という厳しい実体験を表情に出してしまっていたのだろうか。隠していたつもりだったのに。


「また、男にフラれたの?」


「ゲームばっかしてるクセに、鋭い奴め」


「察しが良くて頭の切れるかっこいい男、と、言ってほしいな」


「私と秋葉の会話いつも聞いてるから、でしょ?っていうか、クラスの女子にそういうこと言うなよー」


「言うかよ。うっかり者の姉ちゃんじゃあるまいし。俺はちゃんと、学校では爽やかイケメンキャラの皮被ってるから」


「はいはい。猫の皮被ってるみたいなノリで言わないのー」


「猫の皮って、女が被るもんだろ?男の俺には不要だ」


「演技派中学生とでも言いたいの?すごいねー」


「棒だな、声音。誉めるんならもっと心込めろよな」


 こんな、どうでもいい会話で場をつなげるのは姉弟の特性なのであろうか。昔はそんなこともなかったはずだが、いつの頃からか、二人の会話の大半はこんな感じである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ