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 一見従順そうに見えるルイスの冷静な物言いに、秋葉は苛立ちと矛盾を覚える。


「だったら、今すぐあいなを返して下さい。今日、これから私と買い物に行く約束だってしてるんですから!」

「申し訳ありませんが、それは致しかねます」

「そんなっ……」


 有無うむを言わせぬルイスの表情に、秋葉はひるんだ。穏やかに微笑んでいるのに、ルイスのまとう空気は冷たい感じがする。


(何、この人……。ものすごい力を感じる…!)


 ギュッと力を込めて両手を握りしめる秋葉の隣に立ち、龍河りゅうがが言った。


「話はわかったよ。アンタの言うこと全部鵜呑うのみにしたわけじゃないけど、ここに来てアンタがそんなこと言うってことは、俺があいなの家族だからなんだろ?」

「その通りでございます。勝手ながら、あいな様のことはあらかじめ調べさせていただきました」

「ってことは、姉ちゃんはもう、ここには戻ってこないんだな」

「はい……」


 ふう、と、短いため息をつき、龍河はいた。


「もしかして、妃の証の指輪って、シルバーのっかに青い石がついたやつ?」

「ええ……!その通りです。なぜ、そのことを…!?」


 珍しく、ルイスは驚きをあらわにした。


「やっぱりか。姉ちゃん、あの指輪妙に大事にしてたしな。まさか、それのせいでこんな展開になるとは思わなかったけど……。ある意味、姉ちゃんの望みが叶ったってことか」

「その指輪なら、私も知ってる。でも、あいなの望みが叶ったってどういうこと?龍河君」

「秋葉さん、詳しいことは後で説明します。今は、この人の言うことを聞きましょう。胡散臭うさんくさいけど……」


 あいなを返してほしい。

 こちらの要求はすんなり通らないと気付いた龍河は、淡々とした声音でルイスに言った。


「わかりました。とりあえず納得しときますよ。でも、姉ちゃんが嫌がることは絶対しないって約束してくれます?」

「もちろんでございます。我が国のお妃様としてお迎えする以上、あいな様の意志は最優先いたします」

「だったら、いい」


 龍河は自室に行き、持ち運び可能な小型ゲーム機とソフト、充電器、少女マンガを数冊、ルイスに渡した。


「充電器に関しては異世界で使えるかどうか分からないけど、姉ちゃんに渡しておいて。サブカルのない生活に発狂するといけないから」

「承知しました。責任をもって、必ずあいな様にお渡しいたします」



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