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「緊急事態ゆえ、このような形での訪問となりました。深くお詫び申し上げます」
城にいる時と同じく燕尾服を身にまとった姿で、ルイスは頭を下げた。
「私は、こちらの世界とは異なる別の世界――グランツェールからやってまいりました。ロールシャイン王国次期国王・シャル=ペルヴィンカ=カスティ様の専属執事をしております、ルイス=フォクシードと申します。
本日、あいな様をシャル様のお妃様としてカスティタ城にお迎えしましたことをご報告させて頂きます」
「はぁ!?」
「ロールシャイン……!!」
龍河と秋葉、二人の声が重なる。
二人の驚く姿を冷静なまなざしで見やり、ルイスは言葉を継いだ。
「本来、王子の妃は現国王のご意向により決定され、その後正式にそのことを示す指輪を妃となる女性に渡す、という手はずなのですが、どういうわけか、あいな様はその指輪を先に身につけていらっしゃいました。
あの指輪は、前のお妃様が亡くなられて以来、厳重に保管されていたというのに、なんとも不思議なことです。また、あの指輪は、女性の命が尽きる日まで外れることのない、妃の印。
こうしてあいな様の元に指輪がたどり着いてしまったことは私どもとしましても予想外の展開でしたが、指輪をはめた女性がシャル様の妃になるのは定め。よって、あいな様は本日付けでこちらの世界を旅立つ運びになられたことをお伝えいたします」
「ちょっと、待って下さい!」
そうルイスに声をかけたのは秋葉だった。彼女は、龍河の背後から彼の前へ出て、
「あいなはそれでいいって言ってるんですか?あの子は昔から、好きになった人と結婚するって決めてたので……。そういうの、納得するとは思えないんですけど」
「ええ。現時点で、あいな様は強く反発しておられます」
「やっぱり!私だって、そんなんで結婚させられたら嫌ですよ!」
「そうでしょうね、あなたのおっしゃることはもっともです」




