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文才無くても小説を書くスレ参加作品

未知なる動物を求めて

 文才なくても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:未確認走行物体


 ケルト人のネットフレンドとやらはご大層な見識の持ち主だったんですね。

 それを口には出していなかったが、どうやら大杉さん家の博美さんにはしっかり感情が伝わっていたようで、

「なによ」

 とまあ、とても簡潔に釘を刺してこられた。

「俺は何も言ってないんだけど?」

 と誤魔化せるとも思えない言い訳をしてみるのだが、

「言わなくても分かるわよ」

 とのとてもありがたいお言葉が返ってきた。

 不肖、伊出修一。今代の部長様と以心伝心でいられるなんて嬉しい限りであります。という風に内心で茶化してみたら、ボブカットの前髪の隙間から横目でこっちを睨む眼光がより鋭くなったので、なるほどハッタリではないんだなと驚いた。

 何が驚いたって、しっかり伝わってるのに強行しているところなんか、もうビックリだ。

 先代部長の蓑月の勇次さんもこれにはすっかり苦笑い。せっかくのカメラももう肩から掛けたままが定位置になっていて、シャッターチャンスなどもう全く期待していない様子が見て取れる。

 辻先明と奥羽千翔子はもう勝手にしてろと思うし、実際に勝手にしてる。何をしてるでもなくずっと遠くのベンチに二人っきりで座っているだけだが。

 とても自然に示し合わせたかのようにそういう風になるのにそこから微動だにしないのがもはや予定調和というべきか。見てて腹が立つからとっとと進展しろよと後頭部を叩きたい気持ちに駆られる。馬でもないのに駆られるのは御免だから、こうして離れていられるのはありがたい。

 この乗馬苑はかなり広く、遠くまで緑の芝生が続いている。馬も一品目ではないらしいし、あらゆるサービスもあるらしい。

 高原の風は夏にしては涼しげで心地よく、遊びに来たと考えたなら来て良かったと心の底から思える。

「……悪かったわよ!」

 ……のだが、親愛なる部長様はどうやら罪悪感を感じてらっしゃるようで、

「ここでUMAを見たって話が馬を見たというジョークだって来るまで気付かなくて私が悪うご・ざ・い・ま・し・た!」

 と、一息で感情をしっかり篭めつつそこまで言い切って、グルンと振向いては睨みつけてきた。

「でも、こんな……。分ってる癖に一人にしてくれてもいいじゃない!」

 といってもらえたお蔭で、何をそんなに拗ねているのかようやく分ったわけだが。

「なんだ。分っててこっちに行ってるのかと思ってた」

「え?」

 つまりは相互理解が足りてなかったのは向こうも同じだったようだ。

「普段見ない動く物を見に行くんだろ?」

 軽く説明しつつ勇次さんと一緒に歩を進めると、「えっ、えっ、えっ?」と慌てながら博美はしっかりついてきた。

「ちょっと、この先になに……!」

「とても物珍しいもの」

 問いたげな声音を、博美が出発前に語ったプランで押し潰す。

「普段の生活では皆は目にできないもの」

 知ってたのならそこまではしないが、知らないといったら話は別だ。

「連休の少ない秋の行楽シーズンに向けて、一日でも思い出にできるイベントの目玉らしきもの」

 勇次さんも分ってくれているようで、言いながらも二人してやや足早に歩を進めると、博美は何も言えずに慌ててついてきた。

「プランは兎も角、目指す方向は良いと思ったよ」

 到着と同時に振向いて、指し示す先は馬車の駅。

 ガラゴロガララゴロと鳴って近づいてくるのは馬車の車輪の音。

 少し息を切らせたその姿は普段通りの博美の身長をより小さく思わせたので、思わずそのノリのまま、

「良ければ手をお貸しましょうか、敏腕部長さん」

 などとからかってしまった。

 もちろんそれは逆鱗に触れる態度だったようで、

「一人で乗れるわよ!」

 という声が耳に痛い。

 押し退けるような勢いで真っ先に馬車に駆け込むと、さっきまでとはうってかわって騒ぎ出す。

 清算は勇次さんの先輩の度量に任せつつ、俺も続いて入った。 

 俺が入るとさっき息を切らせていた表情のままで博美は迎えてくれる。それだけ馬車で楽しめるなら、何も未確認生物を探さなくても良かったんじゃないかと思えるくらいのかなりのハイテンションで。

 勇次さんも入って馬車が出発すると、あちこち触って回る余裕がなくなったのでしばらくおとなしくしてはいたが、一度上がったテンションはそう簡単には抑えられなかったようで、

「うわー」

 だの、

「うまー」

 だのと窓から外に騒ぎ始めた。

 これはその内ネタがなくなってウラ「うらー!」ーとでも……言いだしたようなので、いつか未確認生物は見なかったが未確認走行物体は見たと弄くろうと思う。

 自らをURA(Unidentified Running Animal)と名乗る存在がいたと部紙に書いてみて、果たして博美は気付くだろうか。

 きっと「馬車ならURO(Unidentified Running Object)じゃない?」とか言ってくれるだろう事を期待しつつ、俺はこの爽やかな高原の風景をしっかり記憶に留めることにした。



 はっきり言って、お題難しいってば……。

 博美さんは今回色々といいところがありませんが、本来は賢い子なんです。たぶん。設定上では……。


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271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/09(金) 09:16:19.39 ID:OqAAgG+A0

で、お題くれってばさってば

272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/09(金) 10:47:03.61 ID:J/sRCL8mo

>>271

未確認走行物体

273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/09(金) 12:21:04.72 ID:OqAAgG+A0

把握しました

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