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魔王の審判

「コスプレさせたかったぁ?」

 ボロボロになった彼らを体育倉庫の床に正座させて語らせた内容は、あまりにも馬鹿馬鹿しいものだった。思わず呆れた声を出す。後から着いた朔太郎と潤平も「なんだそれ」という表情をしていた。

「たまたま部室棟近くを歩いていたらこの服を見つけて、これはどうしても樋口さんに着てみてもらいたくて・・・。」

「で、こんな所に呼び出したってのか?」

 こくりと頷く。

 どうやら畑に宝がなかったのは暗号解読が間違っていたわけではなく、彼らがカードごと持って行ってしまったからのようだ。

「襲おうとしてたんじゃねーのかよ。」

 潤平の剣呑な声に彼らは慌てて弁解を始めた。

「そんなこと思ってないです!滅相もない!」

「俺たちは一花ちゃんのファンなだけです!」

「ドレスアップした一花ちゃんを見てみたかっただけです!」

 ヒートアップしていく言葉に反比例してこの場の気温が下がっていく。皆一様に顔を引きつらせていた。

 彼らはそんな幸太郎たちに気づかずに、一斉に頭を下げた。

「見つけた宝と暗号カードも渡します!なので許してください!」

 許してくれるまで顔を上げるつもりはないのだろう。そのままの格好で固まった彼らの姿に、幸太郎も溜飲が下がった。

「一花、どうする?」

「まぁ、反省はしているようですし、いいですけど・・・。」

 先程から幸太郎の後ろにくっついていた一花に伺うと、渋々と言った感じで了承した。

「さすが一花ちゃん!」

「俺たちの天使!」

「もっとデレをください!」

 一花が再び顔を青くして背ける。きっと許したというより、さっさと行ってほしいのだろう。

 兄としてこういうのを見過ごすのはどうかとも思ったが、一花がもういいならこれ以上は口出しすることではなかった。さっさと行けという風に手をやる。

「あ、ありがとうございます!それじゃ・・・。」

 彼らはそそくさと退場しようと、体育倉庫を出た。

 しかしそれに待ったをかける人物がいた。


「お待ちください先輩方。」


 引き止めたのは倉庫の扉に寄りかかるように立つ夏目だった。いつの間にか来ていたようだ。

「げ、夏目・・・。」

「なんで生徒会長がここに?」

 それには答えず、夏目は扉から背を離すと彼らに向かい合った。

「学園の奥にある部室棟の脇は何もありません。たまたま通りがかるなんてことは有り得ない。そんな場所で何を?」

 とたんにぎくりと体を揺らす男子生徒たち。目に見えてうろたえだした彼らに、幸太郎たちも首を傾げる。

「な、何をって別に・・・なぁ?」

「あ、ああ。」

 お互いに頷き合いながら言い繕っていたが、彼らの足は体育館の外へとじりじりと後退していた。そのうちの一人がずっと持っていたエナメルバッグを抱きしめたのを夏目が目に止める。

「なにやら先程から、その鞄を随分大事そうに抱えていますね。拝見させてもらっても?」

「え!?いや、これはちょっと・・・。」

 にこり。

 言いよどむ彼らに、夏目は綺麗な笑顔を浮かべる。翻訳すると「さっさと見せろ殺すぞ」だ。

 殺気を敏感に嗅ぎ分けた彼らは、震える体に叱咤して走り出した。

「に、逃げろ!」

 その掛け声を合図に、出口に一斉に向かう。しかし夏目は慌てる様子もなく彼らの背中に指をさした。

「潤平!Go!」

「俺は犬か!」

 ツッコミをいれつつも、潤平は体育倉庫のサッカーボールを手に取り、男子生徒の鞄めがけて蹴り上げた。

 まっすぐ突き抜けるボールは先頭の男子生徒の鞄にぶち当たった。バランスを崩した彼はもんどりうち、それに後続の生徒たちも次々と転ぶ。その拍子に、大量の紙のようなものが鞄から散らばった。

「これは・・・?」

 足元に落ちた一枚を一花が拾う。

「わぁぁぁ!見るなー!」

 静止の声を流してひっくり返すとそれは―――女子生徒たちの写真だった。

 どれも目はこちらを向いておらず、許可なく撮ったものだとわかる。流石に着替え中のものなどはなかったが、きわどい写真もいくつかあった。

「噂になってた盗撮犯って・・・」

「あんたたちだったの!?」

「うぅ・・・。」

 一花と朔太郎の言葉に観念したのか、生徒たちはうなだれる。

「じゃあ部室棟の近くを歩いていたのもたまたまじゃなく、盗撮してたってこと?」

「すみません・・・。つい出来心で・・・。」

「出来心って量じゃないよなぁ。」

 幸太郎は床に散らばる写真の数を見て呆れた声を出した。こんなにたくさんの写真は、ちょっとやそっとの執念では無理だろう。

(ん・・・?)

 一枚気にかかる写真を見つける。しかし拾う前に誰かの足が乗った。

 それは生徒たちを見下ろしていた夏目だった。

「さて、お前たち・・・死ぬ覚悟は出来ているんだろうな。」

 告げられた言葉に、彼らは悟った。むしろ地獄はこれからだと言うことに。夏目は一人一人の顔を嬲るように見下ろしてから、凄艶な笑みを浮かべた。


「楽しい制裁の時間だ。」



雪春が出ないから音楽の豆知識が載せられません(笑)

しかも恋愛どこいった?みたいな展開で申し訳ないです。

恋愛はあります!きっと!

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