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魔王の手

「あ、潤ちゃん。」

 再び宝探しをしていた時、朔太郎が前を見て声を上げた。幸太郎もその方向に目をやると、前方に腕章をつけた潤平が歩いていた。何かを探すように教室を一つ一つ覗いている。

「どうかしたのか?」

 声をかけると、潤平はやっとこちらに気がつき、幸太郎に尋ねてきた。

「樋口見ませんでした?」

 探しているのは一花だったようだ。待ち合わせでもしていたのだろうか。

 すると潤平は困り果てたように頭を掻いた。

「見回りの時間になっても来ないんだよ。」

「あの子ミスコンに出るんでしょう?準備に忙しくて忘れちゃったんじゃないの?」

 他にもクラスでの仕事があるのだ。その可能性は高い。しかし朔太郎のありえそうな意見にも、潤平は頷かなかった。

「あいつが仕事を忘れるとは思えないんだよな。それに・・・」

「それに?」

「最近、視線を感じるって言ってたんだ。多分噂になってる盗撮と関係あると思うんだけど、何かあったんじゃないかと思ってさ。」

 その言葉に、朔太郎は呆れたような声を出す。

「ばかねぇ潤ちゃん。女の子がそういうことで怖がってるなら守ってあげないと。」

 潤平は少しムッとした顔をして「委員会で遅くなったときはちゃんと送ってるっつーの。」と反論した。

「まぁでも考えすぎだよな。いくらなんでも学校内で襲われるなんて・・・」

 そこまで言いかけて、潤平と幸太郎は固まった。実際に二ヶ月前、学校内で襲われるということが一花にはあったからだ。

「・・・探そう。何かあってからでは遅い。」

「そうですね。」

 幸太郎の言葉に、潤平はすかさず頷く。

 しかし学園内は広い上に今は文化祭で人が多い。手分けして探そうにも時間がかかりすぎてしまう。そこで幸太郎は助けを借りることにした。

「どこに行くの?」

 迷いなく歩き出す幸太郎の背中に朔太郎が問いかける。

 幸太郎は胸を張って返した。

「俺のモットーは、使えるものは魔王でも使えだからな!」









「で?僕のところに来たわけですか。」

「お前ならわかるだろう?チリ紙だかなんだかっていうカラスで。」

「式神です。」

 すかさず夏目は訂正を入れた。

 夏目と賢仁は一体いつ校内を回っているのか不思議になるぐらい、生徒会室にこもっていた。しかしおかげで今は探す手間が省けた。カラスの目を通してものを見ることができる夏目なら、一花の場所もすぐに探り当ててくれるだろう。実際夏目は直ぐに手を打ってくれるようだ。

 夏目が生徒会室の窓を開けて指笛を吹くと、例のカラスが舞い降りてきた。

「え?カラスってそういう鳥だったか?」

 潤平が思わずつっこむ。確かに、指笛で呼ぶ鳥と言ったら鷲とか鷹とかそんなイメージがある。

 すると朔太郎が頬に手を当てて答えた。

「綜ちゃんはたまにカラスと会話してるのよ。」

「なんだそれ、いよいよヤベーなあいつ。」

 瞬間、潤平の真横を何か鋭いものが素早く通り過ぎる。潤平が恐る恐る後ろを見ると、壁に突き刺さるシャープペンシルが目に入った。投げた張本人である夏目は困ったように首を振る。

「すまない外した。」

「謝るとこそこかよ!」

 もはやシャープペンシルって壁に刺さるの?という疑問も生まれなかった。

 

 

 とまあそんな一幕はあったが、夏目は一花を見つけ出せたようだ。つむっていた目を開けて、幸太郎を振り返る。

「・・・第三体育館の脇。男子生徒といる。」

「第三体育館だな!」

 幸太郎はすぐに走り出した。

 昼時で廊下はますます混雑している。しかし幸太郎は巧みにそれを避けながら、猛スピードを出した。途中で教師らしき人物とすれ違う。

「こら、廊下は走るな・・・って三島先生!?」

「緊急事態だ!」

 無視するのはまずいので一応返答したが、後で謝らないと雪春が怒られそうだ。幸太郎は胸中で謝ってから更に足を早めた。

「ってか先生、足はやっ」

「やっぱり今日のユキちゃん先生、雰囲気違うわ~」

 後ろを追いかける潤平と朔太郎が続く。

「きっとスイッチ入ったんだな。」

「スイッチ?」

 走りながら器用に小首を傾げる朔太郎に、潤平は目を輝かせて答えた。

「前もあったんだよ。三島先生は樋口が危ない目に遭うとハイパーモードになるんだ!」

 その少年のようなオーラに、朔太郎は何だか微笑ましいものを見るような生暖かい目つきをした。

「・・・潤ちゃんってそういうところ、本当に男の子よねぇ。」



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