壊れたホース
今日は二話更新しています。最新話から来られた方は前話からお読みください。
最初からまとめて一話にすれば良かったと後悔している今日この頃です。
部室棟脇を訪れると、案の定それなりに立派な畑があった。野菜が少ししかないが、きっと収穫した後なのだろう。
「こんなところに畑があったなんて知らなかったわ。」
「多分清水先生が来てから作るようになったんだろうな。」
「園芸部ももっと自己主張すればいいのに。」
朔太郎も園芸部の遠慮を感じ取っているのだろう。釈然としない思いを吐き出すようにため息をついた。
きゅうりの葉が茂っている為、等間隔で刺さっているネットの間を一つ一つ確認する。そこにはあと数日で収穫できそうなナスやきゅうりがいくつか生っていた。しかし、肝心のものは見つからない。
「・・・ないじゃない。」
「ホントだなー。違ったのか?」
当てが外れて幸太郎は頭を掻いた。結構自信があったのだが、別の意味だったのだろうか。
「あれ?三島先生と荻野先輩。こんちわ。」
「もしかして先生たちも宝探しに参加してるんですか?」
男子生徒二人が後ろに立っていた。“も”ということは、彼らも参加しているのだろう。幸太郎たちと同じように解読して訪れたのかもしれない。
幸太郎はここにはないことを告げると、二人は「えー?絶対ここだと思ったのになー。」と残念そうな顔をした。遠路遥々、学園最奥のこの場所に来たのだ。気持ちは痛いほどわかる。
すると一人が畑のきゅうりの葉を触り、もう一人を振り返った。
「そういえば、水遣りしなくていいの?当番だれ?」
どうやら二人共園芸部のようだ。あの暗号ですぐにこの畑に思い至ったのも、それなら頷ける。
「あ、だめだめ。ここは今、清水先生がやることになってただろ。」
「あ、そっか。」
「なんでだ?」
思い出したように納得した生徒の代わりに幸太郎が尋ねる。
「ホースの調子がおかしいんですよ。暴発したりするんです。」
蛇口と接続する部分が弱っているとそういうこともある。園芸部自体は昔からある部活なので、ホースも古いのかもしれない。
「でも、水道なんてどこにあるんだ?」
「部室棟の裏にありますよ。」
脇から裏を覗くと、たしかに古そうな蛇口があった。あそこからホースを伸ばしているわけか。
「だからホースを新しいのに変えるまでは触らないようになってるんです。」
しかしその言葉にまたもやもう一人の生徒が首をひねった。
「でもたまに部長も水やりしてなかったか?」
「たぶんどうしても清水先生ができない日は代わりにやってたはずだよ。」
あの部長もなかなか多忙なようだ。幸太郎は感心した。