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アリスの嫉妬

昨日に引き続き今日も二話更新しています。最新話から来られた方は前話からお読みください。

 お昼のピークを過ぎていたが、そのクラスは人が多かった。入口の看板には“不思議の国のアリスのティーパーティー”と書かれている。一花のクラスだ。

 あれから次の場所を探していたが宝は見つからず、遅い昼食をとることにした。そこで一花との約束を思いだし、幸太郎も行きたそうだったので訪れたのだ。長い列ができていて時間がかかりそうだったが、朔太郎も入ってみたいというので最後尾に並んだ。かわいらしい外装の店なのに、並んでいるほとんどが男性客であることに内心首をかしげる。しかしやっと順番が回ってきて中に入った時、入口付近にいた少女が笑顔で振り返ったのを見てその理由が判明した。

「いらっしゃいませ・・・あ、三島先生!」

 それは水色のエプロンドレスを身につけた一花だった。黒いリボンを頭に付けているところを見ると、アリスをイメージしているのだろう。

「一花、似合うなぁ・・・。」

 隣でしみじみという幸太郎に苦笑して、彼の分の気持ちも乗せて伝えた。

「樋口さん、かわいいですね。とてもよくお似合いです。」

「ほ、ほんとですか?」

 お世辞の要素が欠片もないほど、本当によく似合っている。教室内にいる客は全員一花に注目していた。おそらく並んでいた男性客も、彼女が目当てだったのだろう。遅刻チェックのために風紀委員として校門に立つようになって、一花の可愛さが全校生徒に知れるようになったからだ。おかげで遅刻者が減ったらしい。代わりに彼女に注意されたいがために服装をわざと崩す生徒が増えたそうだが。

「あらー!あなたが一花ちゃん?かわいいわねー!」

「え?あ、ありがとうございます。」

 突然現れた朔太郎に一花は少し動揺した様子だった。無理はない。このテンションにはすぐに慣れない。

「生徒会執行部の荻野朔太郎さんです。例の宝探しゲームに一緒にエントリーしているんです。」

 雪春が紹介すると、一花は驚いたように目を丸くした。

「え?三島先生参加しているんですか?」

「そうなのよ~。私が無理言ってお願いしちゃって。」

「へぇ・・・。」

 その時の一花の顔は、なんともいえない顔をしていた。例えるなら、ボレロのシンバル奏者がずっと大事に自分の出番を待っていたのに、となりの打楽器奏者についでに叩かれてしまったような。まぁ実際のコンサートでそんなことはありえないが。

「・・・三島先生って意外とまき込まれ体質ですよね。」

「はい?」

「な、なんでもありません!ご注文をどうぞ!」

 一花は慌てたようにごまかしてから注文を取ると、そのままカーテンで仕切られたバックヤードに向かった。ぼそりと言われてよく聞き取れなかったが、一体なんだったのだろう。

「一花に大分なつかれたみたいだな。」

 幸太郎のその言葉に、雪春はますます首を傾げた。


①「ボレロ」・・・ラヴェル作曲のバレエ音楽です。シンバル奏者は終盤で叩くためにひたすら15分待機してます。

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