生徒会長の仕事
「意外と早く見つけたな。」
「そうでしょ!?綜ちゃん褒めて褒めて~!」
夏目が自身より大きい朔太郎をよしよしと慣れたように撫でる。まるで兄弟のような仕草に少し意外な気がした。随分仲がいいようだ。机の前につっ立ってその様子を見ていると、夏目が顔を向けた。
「暗号はメモしてきましたか?」
「あ、はい。」
手帳を取り出してロッカーにある暗号を読み上げる。ここまで持ってきてしまっては次の人が確認できなくなるからだ。
「“暗闇に潜み影を刻むもの”」
またもや意味不明だ。先ほどのヴィーナスのような明確な単語がないため、どこから考えればいいかもわからない。ここに来るまでに二人(プラス幸太郎)で考えたが、まったくわからなかった。
「また難問ですね。」
聞いていた賢仁が呟く。夏目はわかっているのかいないのか、特に反応しなかった。
「では30分後に放送をかけるので――・・・」
その時、昔の某有名みつばちアニメのオープニングテーマが流れた。場違いな音楽に全員の動きが止まる。すると夏目が胸元から黒いスマートフォンを取り出して指をスライドさせた。
「はい。」
そのまま会話を始める。
前から思っていたが、彼の着うたセンスは少し変わっている。しかし賢仁も朔太郎も慣れているのか特に何も言わなかった。幸太郎はアニメソングを懐かしそうに歌っている。雪春も知っているには知っているが、少し年代が違うような気がする。同い年の幸太郎が何故歌詞まで完璧に知っているのか謎だ。
「――わかりました。」
そう言って夏目は電話を終了すると、そのまま立ち上がった。
「賢仁、ここを頼む。」
「出るのか?」
「あぁ、所用ができた。」
そして今度は雪春たちを振り返った。
「では先生、頑張ってくださいね。朔太郎も。リーチは30分だけなので。」
「はい。」
「了解~!」
そのまま生徒会室を出て行った。やはり生徒会長ともなるとやることが多いようだ。雪春は話をしなくて済むことに少しホッとしていた。夏目自身もあまり変わりがないし、やはり昨日のあれは冗談かノリだろう。きっと文化祭の熱にやられたのだ。
雪春はそう思い込むことにした。
今日も二話更新します。