表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
つれづれ  作者: こおり
9/10

幻ミサイル



高いビルとビルの間から、申し訳程度の空が見えた。暗色の壁と壁の合間で気持ち悪くみえるほど鮮やかな青だった。


その青に白く消えかかった細い線が、スッと伸びていた。私はその場で足踏みを2回した。靴底が削れて、釘が見えているピンヒールがカツカツと鳴った。あぁ、あたしはどこへ行けば良かったんだっけ。飛行線に目をやったままあたしの足は空振りの音を鳴らす。カツカツ、カツカツ‥。


前にも後ろにも進みようがないような気がした。腕時計の秒針がそれでも急げと規則正しく頷いていた。目の前のビルがグニャリと首をもたげて、お辞儀をして、崩れ落ちて行く様な幻を見た。ボロボロに崩れたビルの残骸の上をスッと、飛行線が行く。ぐいぐいとあたしの進むべき歩幅分伸びていく。


少しずつ孤を描いてあの線はやがて、地表に落ちてしまうんだろうか。あたしは絵でしか見たことない原子爆弾のキノコ雲を思い出す。もくもくとあの行き場のない粉塵を。あの線はミサイルに変わって、全て終わらせてくれないかしら。眩い光の中であたしはタップを踏むだけの、そんな生活を妄想した。


カツカツ、カツカツ‥


結局いつもと変わらない日常、

あたしは幻のミサイルを待っている。



「幻ミサイル」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ