宇宙圏
世界は大きな箱で、その中を整理するために、小さな箱がぎっしり詰まっている。小さな箱の中身もいっぱいいっぱいだ。だから、うっかりその小さな箱から飛び出してしまうと、行き場どころか、存在するスペースすらなくなって押し潰されてしまう。
父はきっとそのうっかりをしてしまった。
ーー押し潰される前に、違う箱にまぎれこめばよかったのに。
背丈ほどの高さのある箱に、一生懸命紛れ込もうとしている父を想像した。どこかコミカルで可愛らしいアニメーションチックなその妄想も今は笑えなかった。
あたしの今いる箱は、黒と白の悪趣味な縦縞に包装されて、不気味に静まり返っている。
きっともうすぐ、また、この箱から出て行ってしまううっかりは現れるだろう。
それは、きっとあたしか母なんだ。
それは誇大妄想でも、必然の未来でもなく、ただの直感だったんけど。
上辺だけの笑顔で、父が祭壇にいる。泣いている家族を振り返ることなく、笑顔を貼り付けて額縁の中に囚われている。
さよなら、父さん。
あなたは明日には灰になって、あたしたちの箱に戻ってくるのよ。誰の世界でもない宇宙圏になんて行かせない。
戻ってくるのよ。