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アキラメ
ブラインド越しに太陽がギラギラと輝く。直視しすぎた右目が熱を持つみたいに、ジワリと痛んだ。
帰りの車輌はいつも少し空いている。朝のぎゅうぎゅう詰めが嘘みたいに、ところどころに空席がある。
僕はその中のひとつに座って、少しずつ増えていく田んぼに目をやる。一駅、また一駅と地元に近付くにつれ、高いビルは減り、平屋が増える。
背後から電子音で奏でられたエリーゼのためにが聞こえる。直後におばさんのけたたましい話し声が聞こえ、僕は思わず目の前のおじいさんに社会のルールを確認したくなった。
おじいさんは閉じていた目をうっすらと開け、「仕方ない。」と言わんばかりに呆れた表情をしてから、また目を閉じた。
僕はその老人の表情になだめられ、また窓の向こうに目をやった。
そうか、世界はこんなものか。
赤い夕焼けが、街を一色に染める。その色は、僕のなかで膨らんだ諦めの色みたいだった。