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年越しシンデレラ  作者: 塚本リューヤ
3/5

鐘が鳴るまで

 その後も由海の熱はなかなか下がらず、落ち着いたのは12月31日の朝だった。

 由海はその日も一階の畳部屋で寝ていた。

「おばさーん、これどこに運べばいいんですかー」

 そう母に聞く健介の声が聞こえてくる。

 健介は由海が風邪をひいてから毎日、見舞いに来ていて、どういうわけか大掃除まで手伝っている。

「ありがとう、健介君。ホント、助かるわ」

 母はそう言うが、由海はあまり快く思っていなかった。

「どういうつもり?」

 休憩も兼ねて再び由海の寝ているそばに座った健介に、由海はそう聞いてみた。

「何が」

「だから、なんで毎日お見舞いに来て、大掃除までやってるのかって事」

 そう由海がそう尋ねると、健介は分かり切った事を言うように

「いいじゃん、暇なんだからよー。それに、おばさん大変そうだろ」

 と答え、さらに

「おれんちの掃除は終わったの」

 と付け加えた。

 結局、健介は掃除が終わるまで母を手伝い続け、5時過ぎに帰って行った。その頃には由海の熱も平温に近くなっていた。

 夕食の時になると、母が

「今日は健介君が来てくれて本当に助かったわね」

 などと言うので、由海はますます機嫌が悪くなってしまう。

「そういえば由海、健介君と付き合ってるの」

「は?そんなわけないでしょ」

 母がいきなり由海の予想もしていないような事を言い出したので、由海は慌てて否定した。

 事実、健介とは小学生の頃から仲よくしてきたが、恋愛の対象として見た事は一度もなかった。



 午後9時。

『こんばんは、ヨシムリン』

 熱もだいぶ下がってきたので、由海は再びチャットを始めていた。

『こんばんは、ユミ。しばらくチャットやってなかったみたいだけど、どうしたの?』

 凛が由海の事を心配してくれたので、由海は少し嬉しくなった。

『うん、ちょっと風邪ひいちゃってて。もう大丈夫』

『そうなんだ。よかった。』

 それから数十秒後に、凛からまた送信が来た。

『今日は大晦日だから、12時まで起きててもいい事になってるんだ。11時からまたくるね。それじゃ』

 そのメッセージを見て、由海は嬉しくてたまらなくなった。由海も毎年、大晦日は12時までテレビを見たりして過ごしてもいい事になっている。凛と話しながら年末を過ごせると思うと、心が躍った。

 テレビ番組を見ていても、年越しそば(カップめん)を食べていても、由海の心は落ち着かず、11時まで残り10分と言うところまで来ると、パソコンの前を行ったり来たりしていた。

 そして11時まであと5分と言うところで、由海の携帯が鳴り響いた。

 こんな時に誰だろう、そう思いながら電話に出ると、

「由海っ!風邪ひいたんだって?大丈夫?」

 という姉の声が聞こえてきた。

 由海の姉は遠く離れた県にある寮制の私立高校に通っている。

「うん、大丈夫。お姉ちゃんは?今、何してるの」

 そう聞くと、姉は嬉しそうに答えた。

「わ、私?私はね、彼氏と一緒なの」

 姉に彼氏がいることは2年ほど前に聞いていた。こんな時間に彼氏といるのもどうかと思うが、由海は少し羨ましかった。

「そう。私はもう大丈夫だから。じゃあね。良いお年を」

 由海がそう言うと、姉は

「良かった。良いお年を~」

 と言って、向こうから通話を切ってしまった。

(はあ……いいなぁ、お姉ちゃんは……)

 しばらくの間そう思っていたが、はっとなって時計を見ると、11時5分を指している。

 由海は急いでパソコンの前に座った。



 それからしばらく、由海はまた凛と話していた。内容は今日見たテレビ番組についてなどだったが、由海は今日、凛に別の事を話すと決めていた。

 11時55分。

 由海はついに心を決め、凛にこう送信した。

『私、あなたの事好きになっちゃったかも』

 人生初の告白だった。ストレートに「好きです」と伝えるのも恥ずかしかったので、さりげなく想いを告げた。

 凛からの返信が来るまでの時間が、いつもよりもずっと長く感じた。

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