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ガラガラと瓦礫が崩れる音がする。もくもくと砂埃が立っている。
その様子を茫然と見つめる。
え、た、大砲でも打たれたんですか?
「みーつーけーたーぜぇ…?………逃げんじゃねぇよ。」
砂埃が収まって、一つの影が見える。
これまた身長の高い、赤い長髪を一つでまとめてくくっている野性的な男性。
ちなみに、私の隣に立っている人は茶髪だ。
茶髪といっても、日本人が染めた感じじゃなく、地毛なのだろうサラサラとしていて綺麗だ。
と、そんな事はどうでもよくて。
まさか、まさかだけどね?この瓦礫を拳で壊したなんて事…、無い、よね?
思わず後ずさりする。
危険だ。逃げなきゃ。
そう思ったとたん、茶髪の人に腕をひかれ抱きあげられる。
なになに!?
「走るぞ。口を開くな。舌をかむ。」
ええぇぇぇえええ、!?ちょ、ま、っ!
それから、茶髪さんは物凄い勢いで走りだした。
オリンピック選手顔負けの速さで、だ。
いろんな町の角を曲がったり潜ったりと、相手を巻くように道を選ぶ。
「待ちやがれーっ!」
という声とともに赤毛の彼が追いかけてくる音がする。
茶髪さんが苦しそうな表情を浮かべていたので、私を抱えてはきついのでは、と思った。
「そこの角、!右に曲がって!」
咄嗟に私はそう言う。
街を何度も行ったり来たりしているのだ。構図は覚えている。
茶髪さんは私の言うとおりに動いてくれた。
「そこを左に!次はまっすぐ、右言って、右を曲がって、そこ潜って、!」
アーチになっている林のようなところに出たところで、いったん捲けたのだろう、私を下してくれた。
「厄介事に巻き込んで済まない。君は此処から帰りなさい。」
「あ、はい、分かりました…。」
「では、。」
そう言って、茶髪さんは華麗に去っていく。
いったい、今日は何の厄日だ?
そもそも、いったい彼らは何者なんだ?
来ている服装や、品がよさそうなところから指摘族には間違いない、と思う。
なんて事に巻き込まれたんだろう私。
ただ、平凡に過ごしたいだけなのに。
そこで、はた、と気づく。
買った物ぶちまけて帰ってきちゃった!
あーもー、どーすりゃいいの。
踏んだり蹴ったりな一日が終わった。
でも、これは私の災難の始まりにすぎない。