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「アサギリちゃん、アップルパイとアフタヌーンティーを宜しくお願い。」


「アサギリちゃん、俺は日替わりランチ!」


「はいはい、ただいまー!」






お店は朝から忙しい。結構繁盛しているので、お客さんがたくさん来る。

私はお店でまあ、私の世界で言う注文係とか、運ぶ係とか、レジみたいな所謂雑用をしている。

特に忙しいのがお昼と夕方。忙しいったらありゃしない、。まあ、お世話になってるみだから繁盛してくれるのは嬉しいんだけどね?

一か月もすれば仕事に慣れて、常連さんには顔も覚えられて「アサギリちゃん、」と言われている。

身長と日本人独特の童顔のせいだろう、子供扱いされているような気がして仕方がないのだが。

まあ、御褒美といって甘いものくれたりするお客さんもいるからいいんだけどね!甘いものは美味しいし。



この世界の主食はパン。勿論お米は無い。一か月もするとお米や味噌が恋しくなるのだが、我儘は言ってられない。

お店の厨房を深夜借りて色々な日本料理を作ってみたりするのだけれど、………、料理ぐらいできますよ、これでも伊達に一人暮らしやってたわけじゃないんだから!

私がトリップしたときに持っていたカバンの中に図書室から借りた料理の本が山ほど入っていたのが助かった。

マンネリ化した我が家の食卓を改善するべく借りた本が、こんな場所で役に立つとは…。



ちなみに、学校帰りだった私のカバンの中には、勉強道具、山ほどあるお菓子、眼鏡、本、化粧道具、演劇用のウィッグが入っている。

黒髪はこの世界に珍しいらしい。というか、居ない。

だから、私が異世界に落ちた時に偶然に一緒に持って来たかばんのなかに入っていた演劇用のウィッグを被って生活している。

使い辛いが、仕方ない。おかげで私は今金髪だ。

マルサさんだけには黒髪を見られたが、記憶喪失という事で何も知らないをつき通した。

優しい人なので、深くは突っ込まないでくれたけど。


お菓子はこちらでは貴重なガムなどが入っていたため、ちまちま口がさみしいときに食べている。

幸い、買いだめておいたところだったから山ほどある。ふっふっふ。








「アサギリ、最近どう?もうこの場所には慣れた?」


「はい、マルサさん。もう仕事にも慣れましたし、順調です。」


「あんたみたいな子供に仕事させて悪いねぇ、本当なら何もせず普通に過ごしていてもいいんだけど…。」


「あはは…、私もう16ですし。何もしないのは悪いですし、住み込みさせて頂いているだけで有難いですから。」


相変わらず私の事を子供だと思っているマルサさんに苦笑する。

まあいいんだけどね、優しくしてもらえるのは良い事だしー。


「そういやあ、もうすぐこの辺で式典が開催されるから、店忙しくなるだろうけど頑張ってね。」


「式典?」


「その辺で聞かなかったかい?シルヴァイアのお姫様がハルアヴォルトの第三皇子と婚約するのさ。」


「第三皇子、ですか?」


「ああ、レヴィル殿下だね。美男美女でそりゃあもう街は大騒ぎだよ。」


「そうなんですか。」


「ああ、目の保養になるよ。レヴィル殿下は。」



にっこりと笑みを浮かべてマルサさんが言う。

そりゃ、なんだか街が賑わいでいるのもうなずけた。


「母さんはレヴィル殿下ばっかり贔屓して―。シュベルツ殿下の方が格好良いじゃん!」


お、なんだ、ミリアちゃんも参戦か?


「何を言ってるんだい、レヴィル殿下の方が可愛いじゃないかい、」


「シュベルツ殿下の方がかっこいいー!」


やっぱり女の子は恋バナが好きだな。マルサさん、旦那さんはどうしたんですか。


「レヴィル殿下とシュベルツ殿下ってどんな方なんですか?」


素朴な疑問をぶつけてみた。


「レヴィル殿下は今も言った通り第三皇子でね、現皇帝陛下のご兄弟さ。確か今年で23歳になるんだったかな。そりゃあもう見事な銀髪を持った美男さんでねぇ。灰色の瞳に肩に届くぐらいの髪の長さでとんでもない秀才さ。武術にもたけていて誠実なまさに皇子様といった感じのお人さ。」


「それでね、シュベルツ殿下は第二皇子様で確か今年で29歳になられるはず!それはもう美しい金髪に透き通った湖のような青い瞳は吸い込まれそうなのだと貴族の女性の中では評判だそうよ!現帝王陛下の右腕とされる方で、もうそのお仕事の出来のよさっといったら、天才といってもいいほどだわ!」



………、うん、とりあえず、二人の勢いがすごい。

まああれだ、何となくすっごい皇子だってことは分かった。

まあ、私には関係の無い人たちだろう。平凡な日常を送る私にとっては。



「ねえねえ、式典、一緒に見に行こうよ、アサギリ!」


「そうだね、少しぐらいなら抜けてもいいから、見に行っておいでよ。」


「はぁ、わかりました。」


気の抜けた声で返事をする。あんまり興味無いんだけどなぁ。

ま、出店とかあるかもしれないし、見に行くのもいいだろう。お菓子食べたい。


















そんな気軽な事を考えていたが、私の日常は、この日から少しずつ崩れていくことになる。

























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