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さて、私朝霧澪、帰って参りました。
無駄に豪華な馬車に送られて、見事このお店に戻ってきましたとも!
帰ってきたら、マルサさんの熱ーい抱擁を受けた。おおう、ちょっと痛いけど、嬉しい!
「アサギリ…!あんた、よく無事で帰ってきたね!」
「おかげさまで…!何とか無事に帰ってこれました。」
にこりと、相手を落ち着けようと笑みを浮かべる。
マルサさんも、その笑みに安心したのだろうか力を抜いてくれた。
人の優しさを感じるのはこういう時だ、マルサさんの目を見ても、本当に心配してくれた事が分かる。
それからは平凡が続いた。
マルサさんのお店で、お客さんとも仲良くやりながら何とかやっていた。
今日は買い出しを頼まれたので買い出しに行ってきた。
そのついでに、この間、といってもずいぶん前だけど、見つけた私の秘密の場所に行くことにした。
家々が並ぶ道の上の方の、瓦礫を潜った奥にある、この街、国を見渡せるすごくいい場所だ。
細い道を行くと広く一面に広がる芝生。ふわふわとした此処で寝転がっていると、自然といい気分になってくるんだ。
不意に、カサ、と音がした。何だろう、と思って顔をあげたら、そこには―
いつだかに見た、フードを被った男性がいた。
今日も前のようにフードを被っていて、さらさらとした茶色の髪は隠れている。
個人的には、こんなにきれいな茶髪、日本では拝めなかったからフードを外してしまえばいいのにと思う。綺麗だから。
お互い、視線があって、しばらく無言になった後、
「あー……、こんにちは、?」
結局、私の口から出たのはそんな言葉だけだった。