1-11
二人の視線が痛い。
どうしたらいいのだろうか。
考えた結果、私はいい子ちゃんぶる事にした。
うん、これぐらいしかできないもん。
「あ、あの、私誰にも言いませんから…っ!」
あわてた感じにそう言う。
おお、私って役者だ。
「レヴィル殿下がご婚約の式典をすっぽかしたなんて、そんなこと誰にも言いません…!」
無言。
おいおい、なんか反応してくれよ。
冷や汗がたらりと背中を流れる。
嗚呼、緊張で死にそうだ。
少しした後、先ほどと全く変わらない笑みを浮かべているシュベルツ殿下が口を開いた。
「君には、緘口令を敷かせてもらう。」
「緘口令、ですか?」
「ああ、。この愚弟のやらかした事を、誰にも言うでない。もしも破った暁には不敬罪として罰せられるからそのつもりで。」
ぐ、愚弟って…。
容赦ないですねシュベルツ殿下。
ほら、レヴィル殿下もむっつりとしちゃいましたよ、どうするんですか!
「りょ、了解いたしました。」
「ならいい。物わかりのいい子は好きだよ。」
にっこりと笑みを浮かべてそう言う。
……普通の女の子だったらキャーッとか言うんでしょうけどね。
私には胡散臭く見えて仕方ないんですよ。
でも、引きつる顔で一応笑みを浮かべておく。
その笑みを見てレヴィル殿下は物珍しそうな、シュベルツ殿下は小さく眉をひそめられた。
やっべー、!表情まではコントロールできなかった、!
「よ、用件は以上でしょうか?」
狂い紛れにそういう、もう早く帰りたいよう!
「あ?ああ、そうだな。レヴィル、馬車の手配を。」
「了解いたしました。」
あ。何だかんだで帰れそうだ、よかったー!