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あれから、3年

作者: kaitemita
掲載日:2026/06/10

ねぇ、覚えてる?

あの日、こっそり抜け出して、、、、

思い出は尽きない、二人は小さい頃からともにいたんだから。



王都の前、高い城壁に背を向けて立つ騎士を見て降りてきた。

騎士と向かい合うもの。

黒い翼を持つものがいる。


ほぉ、生きていたのか、そして我を招くか。

面白い、お前を倒し虫ケラどもの希望を砕くのも一興だ。


騎士の動きはどこかぎこちない。

、、ふ、やはりな。我の手にはお前を貫いた感触が今もありありと残っている。

お前の後ろにいる巫女とやらでもなおせなかったようだな。

配下のものに空へ留まるように合図し、口元に余裕の笑みを浮かべている。



ぐぉぉぉ、黒い翼を持つものはその痛みより、驚きのあまり声を上げた

前に受けたものと同じ、だが、その威力は想像を絶した。

ば、ばかな、、、おまえは、、、だ、誰だ、、、

光の矢が空から降り注ぐ、光の矢は、翼を持つものも、その眷族も全て貫いた。

この日、魔王は滅ぼされた。

宣託の騎士は、魔王を倒したのだ。



決戦の前日の明け方。

身支度を終えた騎士と、巫女がいる。

さきほど、まで、二人で話をしていたがいまは二人とも黙っている。

扉をノックして、入ってきたのは騎士の部下。二人を呼びにきたのだろう。


巫女様、何かあったのだろうか。

二人の前を先導しつつ、騎士は先ほど部屋に入った時に、巫女の瞳に光るものがあったことを気にかけていた。



黒き翼の魔王が王都の前で倒された日から三年が過ぎた。人々の悲しみはまだ癒えてはいないが、復興は進んでいる。


この街の崩れた外壁の前はひっそりとしている。どの街も、村も同じだった。神殿、村の祈りの場の前に大勢の人が列をなしている。

皆が知ったのだ、魔王を倒した騎士が傷を癒していた古の聖地近くの村で亡くなった、と。


神殿の祈りの場から少し離れたところに、宣託の聖女と巫女がいる。

巫女は神殿には入れない。

聖女は巫女から預かった小さなものを大事そうに胸に抱えて、去っていく巫女を見送る。


巫女の姿が見えなくなり、ゆっくりと神殿へ戻る。

聖女は、二人が幼い頃を知っている。

いつも一緒にいた、何をするにも。

活発だった幼い頃の巫女が、恥ずかしそうにこっそり教えてくれたことも、ありありと思い出せる。

「、、あの、あの、、、ね。わたし、ね。おとなになったら、、、」

聖女は真実を知っている。

あれから三年が過ぎた。

そして、明日はカルネラの祭り。

神殿ではいまも多くの人が祈りを捧げている。



神殿のものたちは、聖女の様子を気にかけていた。

事情知るものは、かつて、あの救国の騎士が幼い子頃、この神殿にいたことから、訃報をきいて嘆いておられるのだろう、と周りものに話していた。

今年、神殿に入った娘は訝しく思った。

訃報の日を過ぎて、カルネラの日が近づくにつれて聖女の憂いは深まっているように思う。少し先に立って、ここで暮らす子供たちを見ている姿は、いつもと違って悲しげだ、

と、ふっと聖女が小さく笑みを浮かべた。

娘はその目の見ている方に目をやる。

あら?こちらに手を振る男の子が、でも、その顔をよく見ようとすると、、、そこには誰もいない。

娘は聖女から声をかけられ慌てて祈りの時がきたことを聖女へ伝えた。



決戦の前の日。

秘密の話がある。

騎士はあの頃のように片目でウィンクをした。

巫女は騎士の部屋に来た。

ウィンクの仕方は子供の時と変わらない。いいことを考えたんだ、といってよく私にそうしてみせてくれた。

でも、何かを決意したような瞳が気になった。


昨日、騎士は、宣託の聖女から呼ばれ、深夜になって帰ってきた。

騎士が戻るのを待っていた皆に笑顔を向けて、勝利の後の話をしていた。

幼馴染の私にはわかった、彼が何かを考えていることを。


言葉が出ない、そんな、そんなことは、って「わたしはいや!」

策がある、そういって宣託の内容を話し出したとき、私は微かな希望を抱いた。

宣託は残酷だった。

いまの騎士には魔王は倒せない、それが宣託。私は覚悟していた。

全ての国が初めてまとまり「聖なる地」へ奴を追い込んだ。そして、明日は決戦。

魔王には、かつて宣託をうけた騎士が挑む。

まだ子供の彼に告げられた宣託は、彼こそが魔王を倒すというものだった。



昼間の決戦を終えた騎士はベッドの上で穏やかな表情を浮かべている。

私の手には、子供の時に宣託と共に渡されたオートマタがある。

決戦の前夜、私は拒否した。

そんな未来はいらない。それをするくらいなら二人で共に、、、。

でも、二度目は断れなかった。

戦いの中、このオートマタには何度も助けられた。

祈りを込めて使うとき、それは従者として戦ってくれた、何度も、何度も。



騎士の訃報から一週間が過ぎた。

カルネラの祭り、小さい頃二人で見に行った。

巫女はひとり、賑やかな街の中を歩く。

ここは、二人が初めて会った思い出の町。


その日の昼間、街の一角にある墓地に巫女はいた。

その一角、名も記されていない墓の前に巫女と、真実を知る二人の騎士がいる。

若い方の騎士はわずかに肩を震わせ、唇をかみしめている。彼の敬愛する宣託の騎士との二度目の別れに耐えきれず。

祭りはまだだが、街は賑やかだ。

魔王の現れる前、二人が出会った時と同じ。

巫女は墓に一つの小さなプレートを置いてから祈っている。


ねえ、覚えてる。

その言葉から始めた話もそろそろ終わりにしないと、3年前のあの日に、今日までと決めたのは私なんだから、、、そう巫女は自分に言い聞かす。

王都の神殿に寄ってから、カルネラの祭りの日に、二人の思いでの街へいくのだから、、。

明るくなってくる部屋、騎士は巫女の方を向き、椅子の上でただじっとしている


、、、私が決めたこと、あの日に。

あなたと、あの思い出の街でカルネラの祭りを見る、と。賑わっていてほしいな、あの日みたいに。


巫女は、一度目を閉じてから、巫女の方を向いてじっとしたままの騎士にそっと口付けをする。


そして、騎士の胸に手をかざす。

もう、休ませてあげないと、、。

二人のいる部屋を包むような光の中、騎士はその本当の姿を表す。


巫女の瞳から堪えきれない涙が流れる。

真の姿にもどり小さくなってしまったもの、騎士だったものを抱きしめて。

二度目の別れは泣かないと誓っていた。

でも、無理だった。



昼の決戦を終えた。

宣託の騎士は敗れた。

魔王は騎士を迎えにきたものたちへ渡して、こういった。

連れて帰って葬ってやるといい、明日にはおまえたちも後を追うことになるがな、言い終えると、巫女に向かって哄笑した。



聞いてほしい、僕の策を。

魔王につけられた傷はあまりにも深く、治癒はあまりにも無力だった。

力を失っていく騎士は、巫女の目を見て伝えた。二度目。

神器のオートマタは魂も込められる。

だから、僕の魂をそこに収めてほしい。

巫女は俯いたまま、うなづく、何度も何度も。


顔を上げて、と騎士の声。

最後の別れを幼い頃からの巫女に告げた。

、、すごいだろ、僕のさくは、、、騎士は巫女にウィンクをしてから、その目を閉じた。


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