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魔王と妹が結ばれた後の私の物語

作者: 吉岡黒
掲載日:2026/02/16

 青く晴れ渡る空のもと、魔法で降らせた花が舞い落ちる中、王都周辺は祝福に訪れた民でお祭り騒ぎとなっていた。

 漆黒の角を持つ黒髪の麗しい魔王と、ミルクティー色の髪に花を飾り白いドレスに身を包んだ花嫁。

 仲睦まじく城下町を散策する二人の様子は有名だが、今日はそれとはまた違う美しく着飾った姿に皆歓声を上げた。


 ここは強い魔力を持ち、人より遥かに長く生きる魔王が治める国。

 魔王は魂に刻まれた運命の花嫁を探していた。そして長い捜索期間ののちに遠い辺境の村に産まれた花嫁を見つけ出した。

 今日は国民が心待ちにしていた結婚式だ。

 幸福が満ちる幻想的な風景の中で魔王と花嫁は優しく寄り添い手を取り合った。





 私は群衆の中から二人を感慨深く眺めた。


 今魔王の隣で笑っているのは、私の世界一可愛い妹であるリリーだ。

 魔王の花嫁の姉、それが私、ミリヤである。

 私には前世の記憶がある。五歳の時両親を亡くし幼い妹を抱えて途方に暮れた時、精神的に大人だったからこそ乗り越えられた。

 辺境の村で大人の手伝いをしてなんとか生き延びていた時、魔王が現れて言ったのだ。

 妹が花嫁だと。

 ちなみにその当時リリーは二歳。ロリコン!と叫んで魔王の側近に危うく切り捨てられそうになったのも今となっては笑い話だ。

 その後王城に連れてこられ、リリーを守り育てること十数年。


 立派なレディとなったリリーは今日お嫁に行った。


 国民の歓声の中、しっかりと幸福な魔王と妹の姿を目に焼き付けた私は、そっと歩き出す。


 今日この日城を出るとずっと前から決めていた。

 魔王も妹も引き留めてくれたけれど、私の意思の固さを見て渋々了承してくれた。

 私ももう二十歳を超えたし、小姑がいつまでも居座るのもちょっとね。

 新婚さんの邪魔はしたくないし、ラブラブな様子を見るのも少し気恥ずかしい。


 それにこの世界には魔法がある。私の魔力量は人間の中で平凡だけど、イメージさえしっかりしていれば何でもできるからとても便利。

 リリーがある程度大きくなってからはメイドの仕事もしていたから、それなりに蓄えもある。


 あの魔王なら何があってもリリーを守ってくれるだろう。

 もう姉としてできることもない。もちろん何かあれば飛んでくるけれど、私も私で自立して生活したい。


 なによりこんなファンタジーな世界、いろいろ見て回らなきゃ損だよね!




 早速王都を出た私は、街道から少し外れて鞄から畳んだ小さめの絨毯を取り出した。

 広げて置き、指を沿わせて魔力を流す。


 ぼんやりと光を帯びる絨毯。これが私の得意な魔法だ。

 私は物に対して魔力で「条件付け」ができる。空飛ぶ絨毯にしたければ「浮かぶ」「乗り物」という感じで。

 難しい条件付けほど魔力を消費するけど、前世の創作物でイメージは掴みやすいので私の魔力量でも問題なく扱える。


 使うたびに毎回条件付けしないといけないのが面倒だけど、かなり万能でとっても便利。

 もしかしたら転生チートってやつかもしれない。


 というわけで、空飛ぶ絨毯に乗って早速風を感じよう。

 座って片手を絨毯に置いてコントロール。ゆっくりと地上五メートルほどの高さを滑るように動き出す。

 うん、外で使うのは初めてだけど問題なさそう。


 城の自室の中でいろいろ試した結果、移動はこの絨毯が一番安全だったのよね。

 最初は箒に乗ろうと思ったんだけど、不安定でちゃんと座れなくて諦めた。

 私も魔女になってみたかった……。


 丘に差し掛かったところで、ふと絨毯を止めた。くるっと向きを変えて高いところから王都を見ると、遠くに王城も城下町も一望することができた。


 十年以上暮らした場所だから、友人もいるし離れることに寂しさもある。

 ……旅をして、いろいろな街からリリーに手紙を出すのも楽しそうだなぁ。

 いずれお土産を持って里帰りしてみるのもいいかもしれない。

 王城に里帰り、なんて王族でもないのにおかしいかも知れないけど、それだけ長く暮らしていたのだ。魔王もそれくらい許してくれるだろう。

 私は王都に手を振った。


「行ってきます!」


 転生して初めての一人旅、出発!!




 ……。

 私は知らなかった。

 魔王が善意で私に護衛を付けていたなんて。

 私が飛んで行ったせいで置いていかれた護衛が、はしゃいで移動しまくる私を必死に探しているなんて。


 何も知らない私の前に半ギレの護衛が現れるまで、あと半年……。

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