半減期
なんかもったいないな
「青春とはこの世に存在してはいけない」
青春とはこの世に存在してはいけない。
なぜなら、それは残酷だからだ。
「今しかない」なんて言葉で人を急かし、
「若いんだから」で失敗を笑い、
「思い出になるよ」で痛みを美化する。
そんな曖昧で都合のいい概念を、
誰が発明したのだろう。
俺は放課後の教室で、
誰もいなくなった机の列を眺めながら考えていた。
窓の外では、サッカー部が叫んでいる。
青春の象徴みたいな声だ。
――ああいうのが、正解なんだろうな。
汗を流して、
友達と笑って、
恋なんかして。
でも、教室の隅に座っている俺には、
それはどこか別の世界の話だった。
「帰らないの?」
振り返ると、同じクラスの佐倉が立っていた。
クラスで一番“青春してる”タイプの人間だ。
「青春、してないの?」
いきなり核心を突かれて、
俺は少し笑った。
「してない。ていうか、する必要なくない?」
「それ、負け惜しみって言うんだよ。」
痛いところをつくな。
でも俺は知っている。
青春ってやつは、全員に平等じゃない。
目立つやつが輝いて、
目立たないやつは背景になる。
そんな舞台装置みたいなものが、
どうして美しいとされるのか。
「じゃあさ。」
佐倉は窓の外を見ながら言った。
「青春が存在しなかったら、何が残るの?」
俺は答えられなかった。
残るのは、ただの時間だ。
特別でもなんでもない、平凡な日々。
でも――
それって、そんなに悪いことか?
青春がなくても、
誰かと話して、
何かに悩んで、
少しずつ変わっていく。
それを青春って呼ぶから、
しんどくなるんじゃないか。
俺は立ち上がる。
「佐倉。」
「なに?」
「青春ってさ、禁止用語にしない?」
彼女は一瞬ぽかんとして、
それから吹き出した。
「意味わかんない。」
その笑顔は、
たぶん世間が言う“青春”そのものだった。
でもその瞬間、俺は思った。
もしかしたら青春は、
存在してはいけないんじゃなくて、
存在していると気づいた瞬間に
終わってしまうものなのかもしれない。
放課後の教室に、
オレンジ色の光が差し込む。
俺たちはまだ知らない。
この何気ない会話が、
あとで「青春だった」と呼ばれることを。
相変わらずかわいい




