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順応


 ライオンとして生まれて早二ヶ月が過ぎようとしていた。



 今ではしっかり歩けるし会話も普通に話す事ができてきた。


 なにより、ここの生活に慣れていった。



 メスライオンは俺達の育児をみんなで協力してやってくれたり、狩をする。


 オスライオンは今のところ寝てる姿か食事をする姿しか見た事がない。


 だが、そういうものだと思ってしまえば、変に関わることもないし環境はいい。



 あんな父親なら別に話したいとも遊びたいとも思わないしな。



 俺は兄弟である姉のリリィとカイルと遊んでは寝てを繰り返していた。



「アラン!あそぼー!」

「お姉ちゃん!お兄ちゃん!何して遊ぶ?」



 とこのように、毎日遊んでいる。


 母さん曰く、身体を動かすのは大事だし、兄弟のじゃれ合いが狩に繋がることもあるという。


 だから、俺も思い切り兄弟達と遊んでいる。



「ねーねーアラン?」


「なにお姉ちゃん?」


「今日は待ちに待った肉を食べる日だよ!」



 そうだ。生まれて二ヶ月目。

 今日から母さんがミルクを卒業して肉を食べなさいと言っていた。


 リリィとカイルは楽しみにしているようだが、俺は少し複雑だ。


 だって人間の記憶があるのに、動物の死体、それも生肉にかぶりつくのである。


 それに言ってはなんだが、蝿や虫が飛び交ってる肉にだ。



 母さん達が食事をしているのを見るだけで、俺は吐き気を催していた。


 だが、ここで食べなければ成長できないし、ライオンとしておかしいだろう。


 せめて焼きたい。

 だが、火なんて起こすことはできない。


 ここは腹を括ってやるしかないだろう。

 郷に入っては郷に従えというやつだ。



 俺は母さん達が狩から帰るまで緊張しながらもいつものように遊んでいた。



 そして、数時間後、母さん達は帰ってきた。



 前回鹿と思っていたがあれはインパラであった。

 そして、今日もその肉を持って帰ってきた。



 まずはいつも通り双子のオスライオンが飯にありつく。

 この光景も見慣れた。


 その代わり、別のオスライオンや肉食獣が来たらちゃんと働けよ?


 そう思いながら怒りを抑えることに成功した。


 そして、ハンも食事を済ませて次にメスライオン達が食にありつく。


 双子やハンが食べたとはいえ、まだまだ肉は残っている。


 だが、俺達はいつ食べるのだろうか?

 そう思っていると母さんに呼ばれた。



「こっちへ来て一緒に食べなさい」



 俺達は駆け足で寄ると母さんやほかのメスライオンが場所を空けてくれた。


 双子は最低野郎だが、ハンや他のメスライオン達は本当にいい人、いや、いいライオン達である。



 俺は恐る恐るといった感じで肉に近づく。



 うぉーーー。すげーーーリアル。

 内臓やら血やら肉やら全部見えてる。


 だが、生き残る為には致し方ない。


 それに、何故だろうか。


 とても気持ち悪い光景を目の当たりにしているはずなのに、何故か涎が止まらない。

 それに匂いも最高にいい。


 俺は無意識に口を開き、目の前のインパラの死体にかぶりついていた。


 そして、肉を噛み切る。

 肉は固く、上手く千切れなかったが、引っ張って無理矢理口に含んだ。



 美味い!!!!!



 生で感じる肉の味、血の味。

 全てが最高だ。

 こんな美味い肉を焼くなんて馬鹿げてる!



 そう思えるほどに初めて食べる生の肉は美味かったのである。

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