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兄貴


 またやってしまった。

 俺は再び殴られるのだろうと身体を構える。


 だが、聞こえてきたのは笑い声である。


「ハッハッハッ!安心しろ。俺はお前を殴ったりしねーよ。むしろ、お前のあの態度には驚いたぜ!まだ生まれたばかりなのに漢だな!」



 そう言って、そのオスライオンは俺の身体を舐めてくれた。


 ん?よく見ればコイツはあの双子じゃない。

 確か、あの双子の後ろを歩いてたような。


 こき使われてるって言ってた奴か!


 とにかく、このオスライオンはまともなようで俺は身構えるのをやめて安堵した。


 現に母さんもいつものように落ち着いていた。



「彼の名前はハン。あなたが目指すなら双子の兄弟ではなく彼のような男よ」



 母さんが俺にそう話す。

 母さんがそこまで言うということは、頼りにしていいのだろう。


 俺は頷いた。



「ほう。まだ生まれたばかりなのにだいぶ言葉も理解してると見えるな!それに身体も頑丈そうだ。だが、俺みたいな漢にはなるなよ?俺はあの双子にいいようにコキ使われてる情けねー漢だからな」



 なるほど。確かにそうだ。

 メスライオン達もそう説明してくれた。


 彼は双子にこき使わせられる為にプライドに入れてもらったと。


 なんかムカつく。

 彼も双子と同じくらいなガタイをしてるし、もう大人だ。

 何故、あんな奴らの言いなりになってるんだ。


 俺は回らない口でなんとか必死に言葉を発する。



「ハンは、なんでいいなり?!!!たたかえ!あいちゅらわるいやちゅ!!!ハン、おとな!からだおなじ!たたかえ!」



 言葉遣いはまだしも、言いたいことは言えた。


 俺の言葉にハンが驚いている。母さんも。


 そして、しばらく口をポカーンと開けていると、微笑み、口を開いた。



「ハッハッハッ!すげーなお前。いや、お前のいう通りだ。情けねーよな?

 だがな、それはできねーんだよ。プライドってのはそんな簡単な話じゃねーんだ。オスライオンがたくさんいればそれだけで、周りから狙われにくくなる。仮に、俺があの双子と戦っても二体一では負けるだろう。それに仮に勝ったとしても俺も傷だらけになる。そうなればこのプライドにはオスがいなくなる。するとどうなるか。

新たなオスが来て、お前達赤ん坊は殺されるんだよ」



 俺は彼の言葉を理解した。

 俺が今言っていたのは所詮感情論に過ぎない。


 彼が言ってるのは正論だと理解したからだ。

 俺はプライドを何もわかっていなかった。


 俺達が殺されるのも当たり前だろう。

 前のボスの子供なんて反逆の火種だ。

 そんなのを残しておくメリットなんかない。


 例え、俺に父への尊敬がなくてもだ。

 乗っ取る奴らからしたらそんなのは知ったこっちゃない。


 それに、子育て中は発情しないとも言っていた。

 つまり、前のボスの子供など邪魔者の何者でもない。



 俺はハンの言葉を素直に受け入れ頭を下げた。



「ハンしゃん。ごめんなしゃい」



 素直に自分の発言が間違いだと思い謝るとハンは何も気にしてないかのように頭を舐めてくれた。



「気にすんなよ!お前はまだ赤ん坊だ。今はそんなこと考えなくていい。いつかお前も大きくなった時にお前もお前のプライドを持つ。その時、あの双子や俺みたいにならないようにしっかりと自分の道を見つけとけよ?成長なんてあっという間だからな」



 ハンは本当にすごい。

 俺は力強く頷き、目指すべきものを確定したのであった。

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