ハイアンドロウ
俺達はゼロを新たに仲間として、再び旅を続ける。
兄弟を見つけつつ、自分たちのプライドを探す。
ゼロも二歳であり、みんなの年齢が近いのは良い事だった。
そして、三頭ものライオンが並んで歩いていれば誰も手出しはしてこない。
まぁ、ガランのおかげだろうが。
俺達は狩をしながらもどんどん歩を進めて行く。
たまに、狩で怪我をするもゴートンお手製の傷薬があるから前より格段に安心して狩ができる。
ゴートンの作った傷薬の効能にはゼロも驚いていたが、逆にゼロのそのスピードにはゴートンも驚いていた。
結果互いに驚き、互いの存在を認め合う形となって、俺達の信頼は更に深まっただろう。
俺達は無理には進まず、陽が沈むか、午後のうちに獲物を狩る事ができればすぐに歩くのをやめ拠点を作った。
確かに兄弟の心配や母さんの心配はあるが、俺のわがままで彼等まで強要する事はできない。
今日は陽が沈む前に獲物を狩る事ができた為、手頃な水辺近くの草むらに拠点を作った。
ゴートンがいるおかげで拠点作りはあっという間である。
「これぞ縁の下の力持ちというやつだな。俺に力はなくともやれる事はたくさんある。むしろ、俺がいるおかげでアラン達も大いに助かっているはずだ!」
誰もほめてくれないからいつも自画自賛である。
とはいえ、俺は心の中ではいつも感謝している。
本当にゴートンの力は必要不可欠なのだ。
彼がいるといないとじゃあ、この旅の難易度は大幅に変わるだろうから。
今も陽が沈む前には簡易な拠点が出来上がり、寝床も完成した。
ゴートンは鞄に入っている木の実を食べ、俺達は先程仕留めたガゼルを食らう。
ノマドは生き残る事さえキツイと言われているが、俺達は余裕であり、むしろ楽しく暮らせていた。
それもこれも人間の記憶と優れた仲間のおかげだ。
俺の血肉へとなるガゼルに感謝をしながら食らい続けていると、何やら気配を感じる。
「ゴートン、隠れろ」
俺はゴートンに指示を出すとゴートンも必要以上に口を開くこともなく、黙って隠れる。
「囲まれている。ハイエナ達だ」
「なんだ?!俺達の獲物を横取りしようってか?!」
「恐らくそうだろう。アラン、どうする?」
俺達の周囲を数十匹のハイエナが囲んできた。
恐らく餌にありつけず、俺達から奪おうとしてるのだろう。
まさか、ライオンにまでお構いなしにちょっかいを出すとは、ハイエナもいい度胸である。
「相手が動く前にこちらから威嚇するぞ。舐められたら終わりだからな。この獲物は絶対に渡さない」
アランの言葉にガランとゼロは頷き、三頭で一斉にハイエナ達へと飛びかかる。
ハイエナ達もまさか、こんなに早く反撃してくるとは思わなかったのだろう。
俺は一頭のハイエナの首根っこを噛んで吹き飛ばし、ガランはその膂力で薙ぎ払い、ゼロはそのスピードで逃げるハイエナの背後から背中を噛み押さえ込む。
俺達の初撃で、相手も一気に戦意を失ったのかあっという間に四散してしまった。
まぁ、ライオンとハイエナでは体格差がありすぎる。
体格差には頭を使わないと敵うことはないだろう。
ただ囲んで戦っても結局一対一で相手するのと変わらないからな。
俺達にやられ散々な目にあったハイエナ達はあっという間に夜の闇へと消えて行った。
とはいえ、俺達もこのガゼルを綺麗に平らげるわけでは無い。
骨は残すし、多少の肉は残る。
そういったものをハイエナやハゲワシなどが集りにくるのだ。
恐らく今回のも襲撃ではなく獲物を確認しにきただけだろう。
そして、俺達がここから姿を消せば奴らは獲物を取る。
これがハイエナたる由縁だろうな。
ハイリスクハイリターンを取るかロウリスクロウリターン。
生きている大きな獲物を狩ればたらふく食べれるがその分危険も大きい。
何せ、逆に草食獣に肉食獣が殺されることも少ないか無いからだ。
だからハイエナ達はロウリスクである食べ残しを狙う。
それにハイエナの身体からすれば、俺達の残し物といえどお腹は満腹にはなるだろう。
俺は改めてライオンに生まれてよかったと思うのであった。




