サバンナヒヒ
俺はひたすら走っていた。
そして、気付けば太陽が昇ってきた。
無我夢中で走っていたため、気付けば後ろにはもうハイエナの姿はない。
リリィとカイルは無事だろうか。
そして、母さん達も無事だろうかと、自分の心配より家族の姿が脳裏に焼き付く。
「ここは………どの辺だろう」
辺りを見渡すも、夜通し走ったため全くの見知らぬ土地へと着いていた。
これでは帰ることも合流する事も不可能だ。
いや、どっちにしろプライドに帰ることなどできない。
帰っても殺されるだけだ。
ならば、俺がやるべき事は一つ。
『自分のプライドをつくる』
どうせ二歳になれば追い出されてノマドになるんだ。
たかが一年早くなっただけ。
そう切り替えてやっていくしか俺には精神を保つ事ができなかった。
何せ、一晩でプライドも大切な兄貴も失い兄弟とも離れ離れになったのだから。
「よし!俺ならできる!まずは喉が乾いたな」
一晩中走ったため喉がカラカラである。
俺は草食獣が集まってる場所を見渡す。
恐らく草食獣、それもアフリカゾウがたむろしてる場所には水場があるはず。
俺はゆっくりと歩きながら辺りを見渡すと木の下に小さな水場を見つけた。
しかも、他の動物は誰もいない。
俺は水場に駆け寄り、勢いよく水を飲んだ。
多少汚れているがライオンの身体なら問題なし。
もう慣れたものだ。
水を含みようやく一息つく。
すると、木の後ろから一頭のヒヒが現れた。
ヒヒは俺に気付いていないのか、ライオンが近くにいるというのに水をのんびりと飲んでいた。
「えっ………」
相手に感心したのか逆に俺が驚き声を発してしまった。
そして、俺の声に気付きようやく俺の存在にヒヒも気付いた。
三秒ほどだろうか。
お互い黙って見つめ合う。
ヒヒの口からは水が垂れ流されていた。
「ぎゃあああぁぁぁっ!!!食われるー!!!」
ヒヒは逃げる事もできないほどに驚き腰を抜かし叫んだ。
最早断末魔だ。
ヒヒも食えるだろうけど、今まで食べた事もあった事もないし、今更食べようとは思わなかった。
「食べねーよ!!!お前肉も少なそうだし不味そうだしな!」
俺はうるさいヒヒの叫びを止めるために言葉を発した。
「ぎゃあああぁぁぁ………えっ?………本当に?」
ヒヒは驚くも、俺が微動だにしない事、更に敵意を向けていないことから、多少は信じた様子。
「あぁ。っていうか、お前何でライオンの言葉わかるの?」
今までライオン以外とは会話なんてした事がない。
それに草食獣だって何を言っているのか理解できないしライオンの言葉は通じていないと思う。
だが、目の前にいるヒヒには俺の言葉が伝わっているし、ヒヒの言葉も理解できた。
「ライオンの言葉?いやいや、これはアニマル語な?勝手に自分の言葉みたいに言わないでくれよ。まぁ通じる相手と通じない相手がいるけどな!俺は天才だから色々な言語を理解できるのであーる!」
何だコイツ。少しめんどくさいなと思いつつも、ハンでさえ知らない情報を持っているのは間違いない。
とりあえずはコイツから情報を入手する事にしたのであった。




