プライドの崩壊
オスライオン三頭対三頭の戦い。
二頭でもすごいのに、六頭が戦っている。
迫力が凄過ぎる。
恐怖と共に、同じオスライオンとして憧れるしカッコいいとも思える。
今までは尊敬の目で見れなかった双子のバリとバルでさえカッコよくて見えるのだ。
だが、戦況としては非常にまずいと言えるだろう。
ハンは優勢ではあるが、バリとバルに関してはやはり噂通りなのか先ほどから攻撃を加えることが全然できていない。
振りかぶった前脚は当たらず、噛みついた牙も空を切るばかり。
なのに、相手の攻撃はことごとく受けている。
次第にバリとバルの身体ばかりどんどん傷がついていた。
その反面、ハンは戦いを優位に進めており圧倒している。
やっぱりハンは強く頼りになる兄貴だ。
このまま双子がなんとか粘ってくれればハンが相対する相手を倒して援護に回れるだろう。
そう思っていたのに、予想は大いに崩された。
「だめだ兄貴!コイツらつえーーー!」
「こんなプライドくれてやるよ!だから命だけは許してくれ!」
バリとバルは戦うのをやめてその場を後に逃げたのだ。
俺はもちろん、ここにいるみんなが絶句した。
何が守るだよ。
プライドを守ることがオスライオンの唯一の仕事じゃないのか?!
お前にとってのプライドはそんなものなのか?
味方はもちろん敵もその光景には驚き、いっ時の静寂が訪れた。
そして、ハンが振り返り母さんに何か合図をした。
母さんも頷き俺とカイルに耳打ちをする。
「このプライドはもう終わりよ。彼等に乗っ取られるわ。あなた達は逃げなさい。前回のボスの子供と知られれば殺される。早く逃げなさい」
母さんの言葉にリリィとカイルは驚く。
俺はハンから聞いていたから母さんの言葉は素直に耳に入った。
とはいえ、こんなにも呆気なくプライドが崩壊するとは夢にも思わなかった。
「あなた達三人でしっかり生きるのよ。一年も早くノマドにさせてごめんなさい。もっとあなた達の成長を見ていたかったわ」
母さんは涙を見せながら俺達三頭の頭を舐めてきた。
一歳という若さでノマドになる。
ハンにも聞いていたが、恐らく生き残れる確率は少ないだろう。
だが、ここにいては確実に死が待っている。
それなら俺は少しでも長く生き残れる可能性へと進む。
「わかったよ母さん。今まで育ててくれてありがとう」
その時だった。
一瞬の静寂も束の間、三頭のライオンがハンに襲いかかったのだ。
いくらハンが強くても数の暴力には抗えない。
そして、ハンが戦いの最中俺と目が合った。
言葉でなくともハンの瞳で言いたい事は伝わった。
早く行けと。
俺は傷だらけのハンを見て涙を浮かべながらも意を決する。
「姉さん、カイル。ハンの命を無駄にしてはいけない!行こう」
リリィもカイルも目に涙を流しながらも頷く。
そして、母さんにそれぞれ別れを告げた。
「母さんありがとう」
互いに顔を擦り寄せて俺達は後ろへと走り出す。
しかし、当然相手のライオン達もその姿を視界に捉えていた。
「あのガキ共、逃げやがったな!追え!殺せ!」
相手のボスであろうライオンがそう叫ぶと一頭のライオンがハンの脇を走り抜ける。
「いてっ!!!」
だが、ハンがそうさせなかった。
前の二頭を他所に、アラン達を追おうとしたライオンの首根っこを噛んで行かせなかったのだ。
だが、そのせいで隙が生まれ、二頭のライオンに身体をモロに噛まれた。
「ぐっ、、、行かせねーよ………。あの子達は殺させねー。俺は別にプライドなんかどうでもいい。俺が守りたいのはあの子達の命だ………どうしても行きたきゃ俺を殺してから行きやがれ
だが、一頭は道連れにしてやる。その覚悟があるやつからかかって来い!!!」
身体中血を流し傷だらけになりながらもその目から闘志は消えていない。
その姿には思わず三頭のライオンも気迫に押された。
自分の子供でもないのに命を賭けて守るその姿に母であるララァやメスライオン達はただ涙を流してその勇姿を目に収める事しかできなかった。




