初めての危機
今回の狩は俺が最大の功を上げたということで、子供の水牛を咥えて帰路につくこととなった。
リリィやカイルは大興奮である。
それに、母や他のメスライオン達も俺を褒め称えてくれた。
もちろん嬉しい。
初めての狩に貢献できて、皆の役に立てたし誰一人怪我をしなかった。
恐らくあのやり方が一番効率よく狩が成功するのだから。
だが、いい気持ちはしない。
子供の水牛を寄ってたかって嬲り殺したのだから。
こういう時、人間の記憶が無ければ余計な事を考えずにただ喜べたんだろうなと少し複雑な思いにふけながら歩いて帰った。
そして、俺達のテリトリーに着くとすぐに双子が寄ってきた。
普段は全然動かないけど、飯の時はすぐに来るのだ。
「おっ?今日は水牛か!赤みがたくさんあってうめーんだよな!」
俺が水牛を地面に下ろすとすぐに身体を押し退けられて双子は食事にありついた。
「ねぇーバル。今日はアランが捕まえたのよ。それも初めての狩で」
俺を憐んでくれたのか母さんが双子の兄であるバルにそう離した。
ちなみに弟の名前はバリだ。
覚えやすい名だ。
「モグモグ、んあ?そうか!なら明日からも頼むぜ!お前も使えるようなら守ってやるからよ!」
なんだコイツ。父なら多少褒めるとかしてくれてもいいだろうに。
飯ばかり食べて俺にも見向きもしないじゃないか。
いや、もうよそう。
コイツらには何も求めるな。
いっその事、別のオスライオンに殺されればいいとも思える。
「すげーなアラン。初めてで狩が成功するなんて珍しいんだぜ?自分に誇りを持てよ」
そんな事を考えているとハンが優しくそう語りかけてきた。
ハンはいつも周りをよく見ている。
双子に怒られたライオンがいれば必ず優しく寄り添う。
俺もハンの言葉に何度助けられたことか。
「ありがとうハン。俺が捕まえた初めての獲物。ちゃんと味わって食べてよね」
「当たり前だろ!むしろ、俺が全部腹に入れてやるよ!」
笑いながらそう冗談を言ってハンも水牛にありついた。
双子のライオンは嫌いだが、ここのプライドは好きだ。
頼りになる兄貴分であるハン。
そして、優しい母さんにその家族。
何より仲良しな俺の兄弟達。
どうかいつまでも、この平和な時間が過ぎますように。
そう願うも、この弱肉強食の世界であるサバンナは許してくれないのである。
初めての狩をしたその夜。
一頭のメスライオンが吠えた。
その声は警告。
それも、危険が迫っていると。
そう。他のオスライオンがこのプライド目掛けてやってきたのだ。
初めての脅威が同じライオン。
やはり、サバンナは甘くない。
俺達も弱ければ殺される。
それに、双子やハンが負ければ子供である俺達は殺される。
リリィやカイルを見れば恐怖に震えていた。
二人もわかっているのだ。
負ければ殺されることくらい。
今まで散々だらけてきたんだ。
頼むぞ双子。
そして、頼れる兄貴のハン。




