初めての狩
俺達は緊張しながらも息を潜めて身体を屈めてゆっくりと水牛達との距離を縮める。
目の前には恐らく数百、いや下手をしたら千はいるかもしれない水牛の群。
目指すのは手前の方にいる子供の水牛。
水牛の大きさなら子供でも俺達ライオンの腹は膨れる。
俺は草を顔で掻き分けながらも目標を見つめ、周りのメスライオン達と歩調を合わせゆっくりゆっくりと近づいて行く。
そして、メスライオンのリーダーであるおばあちゃんが停止した。
俺達も同時に立ち止まる。
もう距離にして10メートル程だろう。
心臓が高鳴る。
今まで遠くから見ていただけだが、今は俺も現場にいる。
この爪で、この牙で仕留める時が来たのだ。
俺は高鳴る心臓を抑え静かにおばあちゃんの合図を待った。
水牛達は草を食べるのに夢中で全く気付いていない様子。
だが、近づけば近づくほどに水牛の大きさや迫力が身に染みる。
あんな大きな角に突かれれば一溜まりもない。
今日、下手を打てば俺が死ぬ。
俺は合図がなるまでの間に意を決して前脚と後ろ脚に力を入れる。
そして、その時は来た
おばあちゃんの咆哮によって一斉に俺達ライオンが走り出す。
やばい。
俺が他よりも優れているのか、どんどん俺だけが前に突出している。
他のどのライオンよりも前へと進んでいるのだ。
だが、ここで速度を緩めるわけにはいかない。
俺は目標である子供の水牛目指して一直線に走り抜ける。
おばあちゃんの咆哮により水牛達は四散して反対へと逃げる。
混乱している最初が狙いどき。
俺はみるみるうちに子供水牛との距離を縮めた。
そして、身体が勝手に飛ぶ。
両前脚を前の方に掲げて爪を剥き出す。狙うのは水牛のお尻だ。
グサっ‼︎
俺の爪が水牛の子供へと刺さり、その勢いのまま一緒に倒れた。
だが、俺は前脚に力を入れて倒れてようが水牛からその爪を離すことはしなかった。
転がり、視界が低くなり周りがよく見えないが、捕らえた水牛を見つつ母さんの言いつけ通り周りを見渡す。
案の定、奥から一頭の大人の水牛がコチラへと走ってきていた。
「アラン!」
母さんの声が聞こえた。
俺は子供の水牛の足を一噛みして動きを鈍らせる。
そして、一旦爪を離し距離をとった。
何故なら目の前に大人の水牛が子供を守るためにコチラを威嚇しているからだ。
我が子を守るため………。だが、俺達も食わなければ皆が死ぬ。
弱肉強食。これがサバンナ。
俺は親子だからと情けをかけず容赦なく威嚇する。
そして、他のメスライオンや兄弟達も追いついて親子の水牛を囲う。
緊迫が走る。
今までは遠くで何度かこの光景を目にしていたが、いざ実践するとなるとここまで震えるのかと。
子供の水牛は俺が後ろ足を噛んだおかげで上手く走れない。
そして、メスライオン達が大人の水牛を警戒しつつ交互に子供に牙を食らわせている。
いくら水牛が大きかろうと、こうも囲われては全ての方位を守る事はできない。
ここからは持久戦だ。
10分ほど、囲んで子供を傷つけ、ようやく子供は絶命した。
そして、親の水牛も子供が殺されたのを理解したのか強引に包囲を突破して仲間の元へと走った。
親として切ないだろう。
目の前で子供が嬲り殺されたのだから。
言い訳はしない。
俺達も食わなければならないのだから。
ただ、この子供の水牛に感謝をして頂くとしよう。
それがせめてもの捕食者の礼儀だ。
俺はひとまず最初の狩に成功しのであった。




