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第二章過去と家族その4

 隊長から指示された通り、アテーナとの訓練が始まって一週間が過ぎた。その日、アテーナから呼び出された。


「エア、そろそろ武器を選ぼう。一緒に来てくれないか?」


「何でですか。」


「お前は、他の仲間と違って能力を持ってないからだ。エイションは別だが、そのために武器などを駆使して戦わなければならないからな。まさか素手で猛獣を倒すことになるぞ。それじゃ行こうか。」


昂良はアテーナの後について下へと降りると、訓練場の一角にある整備室で、アルテミスが銃の手入れをしていた。油の匂いと金属音が微かに響く場所だった。


「どうしたんだ?」


アルテミスは、昂良に顔を向けた。


「エアの武器を選んでほしいんだけど。」


アルテミスは昂良を観察するように見つめ、「剣術か、銃術か…、そういえば挨拶がまだだったな。アルテミスだ」と言った。


「どうも、エアです。じゃあ…銃で戦わせてください。」


剣を持つのは、自分の手に血がつくイメージが強すぎた。一方で、銃はどこか現実から切り離された道具のように感じられた。


「わかった。それでどうする? リボルバーかオートマチックか。」


 アルテミスは、壁にあるボタンを押すと、壁がゆっくりと開いた。そこには、映画で見たような無数の銃が整然と並んでいた。ハンドガン、リボルバー、ショットガン、AKなど、種類は様々だ。すべての銃器が、冷たい金属の光を放ち、昂良の日常とはかけ離れた世界を象徴していた。昂良は、壁一面に並んだ無数の銃に目を丸くした。


「すごい数の武器ですね。どこからか貰った、それとも買いましたか?」


「元々は銃の密売から押収したものだ。政府から正式な組織として認められてないからな、銃を購入することができないんだ。でも、やっと承認されるから、軍の銃が買えるようになる。かなり仲間が抜けたからな、戦力増強という点もいいことだ。」


しかし、アルテミスの表情は決して良い結果を伝えていなかった。口元に浮かぶのは薄い苦笑い。抜けた仲間や消えた仲間のことだと、顔が物語っている。昂良は、この組織が経験してきた重い犠牲の歴史を垣間見た気がした。


「それじゃどれがいい?」


「ハンドガンの一番扱いやすいやつで。」


昂良は、素人でも扱いやすく、隠しやすいという実用性で選んだ。


「わかった。それだったら、グロック17だな。装弾数は17発、体で覚えることだ。狙撃場は出て右だ。これを持っていけ。」


 アルテミスから手渡されたグロック17は、予想よりも重く、表面の冷たさが手のひらに伝わってきた。昂良は、アルテミスから渡された小さな黒い装置を装着し、射撃場へと向かった。その場所には誰も居なかったが、映画やドラマなどで見る射撃場そのものだった。斗真とよく海外ドラマなどで観ており、一度でいいから入ってみたいと思っていた。すべて空いているので、昂良は手っ取り早く一番近いところにした。アルテミスから渡された小さな装置を腰につけると、「それは、サプレッサー・サウンドよ。銃声の音をできる限り小さくする装置」と、後ろから入ってきたアスクレーピオスが説明してくれた。


「一般的な耳栓と違って、会話レベルの音は通し、銃声などの衝撃波だけを遮断する優れものよ」


 まるでスパイ映画に出てくるような装置に、昂良は一瞬にして不安を忘れ、ワクワクした。さっそく射撃場の中央に立ち、ターゲットに向けてグロック17を構えた。トリガーを引くと、肩を突き上げるような大きな反動と共に弾が発射された。しかし、耳につけた装置のおかげか、銃声はほとんど聞こえず、「パシュ」という空気を裂くような音が出た。


「すごい…。」


 昂良は思わず呟いた。今まで経験したことのない、静寂の中で小さく響く銃声。初めて銃を撃った興奮と、その恐ろしい威力が静かに放たれたことへの驚きが入り混じっていた。何度か射撃を繰り返すうちに、だんだんと呼吸も落ち着き、狙いが定まってきた。まるで、この射撃場が自分だけの秘密基地になったような気がした。本来なら耳栓をつけて撃つのだが、いちいち付けたり取ったりと手間がかかるし、仲間の声が聞こえなかったら連携も取れなくなる。


オリュンポスは、そのことを考えてこの装置を作ったのだろう。本当に素晴らしいと、昂良は感心した。

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