一人ともう一人の自分その3
「いいか! 3人もの戦力を失ったんだ。それに多重人格と来た。今までは個人でやってきたが、今後は団体戦で戦いをしなくてはならないことが多くなるかもしれん。」
真剣な面持ちで、隊長さんは話を続けた。
「推測だが、エイションは夜しか表に出てこられないんだとしたら、運良く夜しか戦ってこなかったが、これから昼でも戦うことになる。確かに今日出会って、いきなり入れと言われて、無理なことくらいは分かっている。だが、こちらにも事情がある。オリュンポスは、まだ世に出ていない。言いたいことはわかるな。」
確かに隊長さんの意見はわかるのだが、そう安々と学校を抜けられないのだ。しかも幼馴染みの七瀬雫に、このことを関わらせたくないと強く決心した。
「隊長さんの言い分はわかりますし、どこの馬の骨か分からない僕を信用できないことも分かります。ですが、学業は辞めることは出来ませんし、僕には大切な人がいます。なので、入るのを断らせていただきます。僕が《《分身》》できればいいのですが。」
「今言った『分身』のアイデアは、本当になるかもしれないぞ。」
隊長さんが喋った時、皆さんの表情が少し驚いたように思えた。恐らくこれが本題なのだろうか。僕は、続けて質問をした。
「クローンとかですか?」
「まあそれもあるが、我々の今後の目的と少し被っていてなぁ。モンスターズが狙っているものを我々は奪い死守する。その後、エイションと君を別々の人間にする。」
もう僕は、驚くことを止めた。小説なら置いてきぼりになるほど、唖然としていた。
「まあまずは、経緯を説明する。ダノ、報告してくれ。」
「次のモンスターズの計画がわかった。各世界の互いに干渉しないように作られたオーブを奪い、それを使い世界を統一化するために人々を抹消するらしい。」
某有名な漫画の話と若干似ていたが、口には出さなかった。しかし、何故世界を統一化するのに人々を全滅させるのだろうか? その思想は矛盾しており、訳がわからない。世界を支配するのだったらわかるのだが、一体何をしたいのか、謎は深まるばかりだ。
そして僕は、モンスターズについて追求することにした。
「モンスターズは、いわば過激派テロ組織だ。昔は頭が2人、幹部が21人、部下が3万人で構成されていた。先の戦争などで大打撃を受け、今は頭と幹部だけで7人しかいない。過去に奴らは、核兵器を使って世界を支配しようとした。」
「核兵器を保有している国というと、アメリカとかロシアですか?」
だがこの質問に対して想像より斜めの答えが返ってきた。
「奴らが狙っていたのは、原子力発電所だ。しかも閉鎖されているところにだ。」
「そんな、閉鎖されている原子力発電所なんて、ウランやプルトニウムが僅かに残っていたとしても、知れているというのに。」
「そう、そこなんだ。私も最初にそれを思ったのだが、その閉鎖されている所に国に依存しない軍《ダスタリア軍》がいたのだ。」
ダスタリア軍、第二次世界大戦後と冷戦との間にできた、国無き軍隊。アジア人、アメリカ人、ロシア人、ヨーロッパ人の4代人種を人体実験し、死者600万人出たとされた軍隊。ナチス軍よりも多く死者を出したことにより、歴史の教科にも載ったとされている。
「そのダスタリア軍は、閉鎖されている原子力発電所の地下研究施設で、核兵器の開発を進めていたんだ。核が爆発したときに、奴らが開発していた人口的に、タルタロスの能力を発現させる薬をばら撒く計画だった。どこから情報を手に入れたのかはわからないが、モンスターズはそこに襲撃した。」
「ダスタリア軍やモンスターズたちは、どうしたんですか?」
質問で聞き返すと即座に答えてくれた。
「関西チームと一緒に鎮圧したが、数分前に言ったように、多くの犠牲を伴った。アイアスの姉もその一人だ。それに、私の嫁もだ・・・」
「すみません。」
だが隊長は、これ以上言わなくていいと言わんばかりに、優しく首を横に振った。
「まあ話を変えるが、君は2003年の大きな事件を知っているか?」
「はい、中国の上海で起きた、超人大事件ですよね。」
「そうだ。その時もダスタリア軍が開発していた人口タルタロスを使って、上海に放ってしまった。そして、それを止めたのがこのオリュンポスを作った人でもあり、長官でもある世界の首領だ。」
ワールドボス。先程言っていた上海の事件を鎮圧した人でもあり、元大統領でもある。中学生の頃とてもすごいなと感心したのを覚えている。そして話の区切りを見極めて質問をしてみた。
「人口タルタロスがいるということは、天然のタルタロスもいるということですよね。」
「天然と言っていいのか分からんが。タルタロスができた歴史を語っていく」
(昂良は、隊長の『やっと本題に入れる』という小さな独り言を聞き逃さなかった。何だか申し訳ない気持ちになった。)
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