第二章過去と家族その7
腕の傷で片目をつぶっていた鈴木が、痛みに慣れたのか、鬼のような顔で彼の方に迫ってきた。その時、微かな空気の震えを感じた。直後、「パシュ」という音と共に銃弾が放たれたが、鈴木はまるで予知していたかのように、斧でそれを防いだ。常人離れした反射神経、それも銃弾を防御するとは。
鈴木の常人離れした能力を目の当たりにし、彼は、自分が知人だからという理由で鈴木への攻撃を躊躇してはいけないとすぐに理解した。鈴木は、後ろにいたアテーナの方へ向きを変え、近づく。アテーナもそれに応えるかのように、剣へと武器を変え、二人は段々と互いに向かって走り出した。二つの剣がぶつかり合い、火花が散る。そのうちに人質を救出したいところだが、かえって邪魔になると考え、彼は見守ることしかできなかった。二人の攻防はまだまだ続く。段々と攻めから防御に徹しているアテーナは、その時の追跡の疲れが出始めているように彼には感じられた。
「はっはっは! 楽しい、楽しいぞ!!」
鈴木の様子が明らかに変わった。それまで悲しげだった表情が、狂気に染まっていく。彼は違和感を覚え、鈴木の姿を注意深く観察した。振りかぶられた斧に目を凝らすと、微かに光を帯びている。火花のせいで見えにくかったが、それは明らかに異質な光だった。斧を持つだけでは何も起こらない。だが、戦闘が始まると、鈴木は豹変し、斧もまた異様な力を発揮する。これは何らかの能力に違いない。しかも、斧に宿っている可能性が高い。人質を守りながらの戦闘は、アテーナにとって大きな負担となる。助けたい気持ちはあるが、あの激しい攻防に割って入れば、命がいくつあっても足りない。一般市民として逃げるという選択肢も頭をよぎった。だが、見て見ぬふりはできない。彼は覚悟を決め、隙を見て人質に近づいた。彼の意図を察してくれたのか、アリーナは鈴木を数メートル蹴り飛ばしてくれた。その隙に、彼は人質を安全な場所へと運び出した。
人質という制約がなくなったアテーナの攻撃は激しさを増し、形勢は完全に逆転した。鈴木は防戦一方となり、徐々に追い詰められていく。だが、鈴木は不気味な笑みを浮かべ、剣を弾き飛ばした。宙を舞った剣は、アテーナの背後に突き刺さる。鈴木がトドメを刺そうと斧を振り上げた瞬間、銃声が鳴り響いた。肩を撃ち抜かれた鈴木は、苦悶の表情を浮かべて座り込む。アテーナはすかさず手錠をかけ、鈴木を拘束した。数分後、パトカーと救急車が現場に到着した。犯人を銀さんに任せて、アテーナは怪我の手当てを受けていた。
「ありがとな、おかげで助かったよ。最後はドジっちまったけど、いい度胸してるな。ーー後は任せろ。名前教えてなかったな、白雪 美優だ。基地の外ではこっちで呼べ、じゃあな。」
人に褒めてもらうことに慣れておらず、彼の口元には笑みがこぼれた。お辞儀をして家に帰ろうとした時、轟音が鳴り響いた。振り返ると、武器を押収しようとしていたオリュンポスの職員が尻もちをついている。そして、右側のブロック塀が粉々に壊れていた。
「おい、大丈夫か?」銀さんはその職員に駆け寄って問いかけた。
「わかりません。斧を持った瞬間に急に力が湧き出て、すぐさま手放したらあんな感じになって。」
崩れた塀の奥には、先ほど職員が言っていた斧が落ちていた。不気味な光を放つ斧。先ほどの戦闘で鈴木が豹変したことと、何か関係があるのだろうか。
To Be Continued
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