route1 始まりの地
台詞の表記法は、
人物名「台詞」
と表記します。また、人物名の後にENがつく場合は、作中では英語で話している台詞です。
パドリグEN「え!俺、生きてる!よかった!ん?ここはどこだ?病室みたいだが窓が無いぞ」
ここでパドリグは目の前にいた医者のような服装をした男に話しかけられた。
医者のような服装をした男EN「気が付いたか。君の名を教えてくれ」
パドリグEN「俺はパドリグ・クラークだ。それで、俺は何故ここにいる?」
医者のような服装をした男EN「2時間程前に道で倒れていたところを見つけて救助した」
パドリグEN「それと、この世界に何があった?」
医者のような服装をした男EN「ああ、今から言うことは真実だ。7日前に世界各地で核攻撃が行われた。日本は食料も肥料も燃料も自給率が低いし、核シェルターの普及も遅れていたから、少なくとも国民の7割は死んだだろうし、しばらくは多くの人が死んでいくだろう。そして核兵器には大気圏外で爆発させて強力な電磁パルスを起こして電気設備を損傷させる使い方もあるから、被害を受けていないように見えても電気設備が機能していない建物もたくさんあるだろうな」
医者のような服装をした男EN「もう知っていると思うが、核保有国はアメリカとロシアとイギリスとフランスと中国とイスラエルとインドとパキスタンと北朝鮮の8か国だ。その中のどれかの国が最初に撃って、その反撃として他の国も撃ったんだろうな。核ミサイルのターゲットは自国の安全保障にとって脅威となる国の軍事基地やインフラに設定されるはずだから、それらの国ではあちこちで人命やインフラに大きな被害が出ているだろう」
パドリグEN「放射能汚染の影響はないのか?」
医者のような服装をした男EN「君が倒れていたのは壊死した細胞による体への負荷が限界を超えていたからだ」
パドリグEN「は!?それにしては体調も悪くないし痛む場所もないんだが」
医者のような服装をした男EN「それは体内の壊死した細胞を取り除いた後、傷口を治療したからだ」
パドリグEN「どうやったらそれを2時間でできるんだ?」
医者のような服装をした男EN「その方法は説明するのに時間がかかるから今は教えられない。それよりも君にはやるべき事がある」
パドリグEN「やるべきこととは何だ」
医者のような服装をした男EN「まずはシェルター最下層の2つ前の階にある第2シアタールームに行くんだ。それと、君の背負っていたバッグは中身はそのままでここにあるから持っていくんだ」
パドリグEN「ありがとう。じゃあ行ってくる」
パドリグは部屋を出て、第2シアタールームへ行く。第2シアタールームへ入ると、
女の声「10人の入場が完了しました」
パドリグは、数人が椅子に座っていたため、パドリグも同様に椅子に座った。すると、登壇台に立つ男が語り出した。
登壇台に立つ男EN「英語圏の国の皆様、私は防衛大臣兼臨時首相の指令と、天皇陛下の承認を受けここへ参りました。私も人類史上最悪の戦災に遭い深く絶望しています。皆様も同様でしょう。私がここへ来た理由は、世界復興のために必要な古代の秘術を秘匿する世界各地にいる術師の一族によって、魔法という古代の秘術を大衆へ公開し普及させることが決まったことを報告する為です。魔法がどんなものかを説明する動画を今から流すので、動画を見た後に魔法を習得したいと思った方は鑑賞後に、このシェルターの最下層の1つ前の階にある施術意思表示確認所へ向かってください。では動画を流します」
そして、周囲が騒がしくなる中動画が始まった。
動画のナレーションEN「今から魔法について解説します。魔法は、本来は術師の一族の人にしか使えませんが、3000年以上前に術師の一族によって発明された特殊な刺青を施すことで、普通の人間でも使用可能になりますが、眠っている時は発動しません。魔法は、球・波・抗、の3種類に分類されます」
動画のナレーションEN「始めに球についての説明をします。球は、投げると当たった人や当たった場所の周囲に、炎や突風や雷を起こしたり、一時的に変速したり、傷を治したり等の不思議な効果を発生させる球を出す魔法で、呪文詠唱に成功すると手のひらから現れます。どんな効果の球が現れるかは詠唱する呪文で決まります。球の色は詠唱する呪文ごとに違います」
動画のナレーションEN「球の状態は、出現・離脱・接触の3段階に分けられ、出現は球の出現から球が体を離れるまで、離脱は球が体を離れてから人や物に当たるまでの間、接触は球が人や物に当たった瞬間です。出現の段階では球の大きさと重さと形状を自身の思うように変えられるため、矢型にして弓で射る使い方や、銃弾型にして銃で撃つ使い方もできます。離脱は投げることで離脱状態に移行させる使い方が主流です。全ての球は接触の状態に移行した瞬間に球の効果が発動しますが、水などの液体や、球より軽い物や、接触状態移行防止素材で作られた物に当たった場合は、球は接触状態に移行せず離脱状態が維持されます」
動画のナレーションEN「先述した弓で射る使い方や銃で撃つ使い方は、接触状態移行防止素材で作られた弓や銃が必要になります。球効付与可能素材が使われた武器には球の効果を一時的に付与することもできます。また、発動に2回の接触を要する球もありますが、その球は1回目の接触では発動しない性質を応用して、地面に突き刺して地雷のような使い方をしたり、球を打つ道具を使うことで投げるよりも遠くに飛ばす使い方も出来るようになります」
動画のナレーションEN「刺青を施す時は、1回目の接触で発動する球が出る手と、2回目の接触で発動する球が出る手をどちらにするか決めますが、通常は1回目の接触で発動する球が出る手を利き手に、2回目の接触で発動する球が出る手を利き手ではない手にします」
動画のナレーションEN「次は波について説明します。波は、周囲に目視不可な微弱な魔力粒子を放射して、生物に当たって跳ね返ってきた一部の魔力粒子を皮膚で感知することで、生物の気配や思考や行動を読む魔法で、息を吸う時のみ発動します。波は発動原理の性質上、眠っている時以外は呼吸するだけでも魔力を消費する為、緊急事態に備える為に魔力を温存したい場合は、緊急時以外は、皮膚に接触してる時だけ波が発動不可になる封波素材を使った装備品を身につけることをお勧めします」
動画のナレーションEN「波を極めると、微生物の気配を読むことで風や水の流れや地形を知ることや、波で会話する事も可能になります」
動画のナレーションEN「次は抗について説明します。抗は、体や装備品の表面に魔力を帯びさせることで体や装備品の強度を一時的に上げ、体や装備品が受けるダメージを軽減したり、高所から降りたり落ちたりしても負傷せずに着地したりできるようにする魔法で、上歯と下歯を接触させている時のみ発動します。抗は強い程思考や行動が読まれにくくなりますが、その反面気配は感知されやすくなります」
動画のナレーションEN「抗は発動原理の性質上、眠っている時以外は日常生活で無意識に行う動作でも魔力を消費する為、緊急事態に備える為に魔力を温存したい場合は、緊急時以外は、皮膚に接触してる時だけ抗が発動不可になる封抗素材を使った装備品を身につけることをお勧めします」
動画のナレーションEN「抗を極めると、体や装備品で人や物を弾き飛ばす程の強力な攻撃が可能になったり、体や装備品より硬い物を壊したり、地面や水面を蹴って高く跳んだり速く走ったりできるようになります。攻撃や防御をする時に、攻撃が当たる寸前で抗を発動させる等の工夫をすれば、魔力の浪費を抑える事もできます」
動画のナレーションEN「波と抗の両方を極めると、強力な魔力粒子を手や足から撃つ攻撃や、撃った反動を利用した空中での俊敏な移動や、魔力を他者に配給する事も可能になります」
動画のナレーションEN「魔法を使うと体内の魔力が減っていき、魔力を全部使い果たすと魔法は使えなくなりますが、魔力は睡眠をする事や魔剤を飲むことで回復でき、35歳頃までは体内に溜められる魔力の最大量も日ごとに微増しますが、それ以降の年齢では体内に溜められる魔力の最大量は増えません」
動画のナレーションEN「刺青には、万能型・無球型・無波型・無抗型・専球型・専波型・専抗型、の7種類の型があり、万能型は球と波と抗の全てが使えます。無球型は波と抗が使え球は使えません。無波型は球と抗が使え波は使えません。無抗型は球と波が使え抗は使えません。専球型は球のみ使えます。専波型は波のみ使えます。専抗型は抗のみ使えます。それぞれの型の長所と短所は先述した説明から予想はつくと思います。刺青は施した後に変更することもできますが、変更すると体内に溜められる魔力の最大量が初期化されてしまいます。万能型の刺青は最後に発明されたものですが、最も優れているというわけではありません」
動画のナレーションEN「魔法の封印の仕組みは、人の侵入を防ぐ結界を張るという効果の球によるもので、この球を出す呪文と、それを解除する効果を持つ球を出す呪文は術師の一族しか知りません。封印されている物は、刺青のデザイン、魔剤の製造法、強力な球を出せる呪文、魔力で動く道具の製造法、特殊な物質の合成法等があります」
動画のナレーションEN「術師の一族は世界各地にいます。術師の一族は特殊なミトコンドリアDNAによって刺青を施さなくても魔法が使えます。ミトコンドリアDNAは性質上、母から子に遺伝する為、女子は次世代の子にも遺伝しますが、男子は次世代の子には遺伝しません。術師の一族の長は長女が代々継ぐことがほとんどの為、次女以降の女子は独立して、新規に創設した術師の一族の代表となるか、女子が生まれなかった術師の一族に入ってその一族の代表になるかを選択します。刺青は本来、ミトコンドリアDNAの変異で魔法が使えない体質に生まれても、魔法を使える体にする方法を1000年以上研究して生み出された技術です」
動画のナレーションEN「日本にいる術師の一族の集まる場所は、蝦夷と呼ばれた島の真ん中、三本木原と呼ばれた荒蕪の台地、米沢と呼ばれた国があった地、現代日本の国家の中枢の地、父の島と母の島がある村、かつてアメリカ領事館が置かれた寺がある町、能登という半島にある漆器の街、忍と呼ばれた者の集まる地、神無月を神有月と呼ぶ人の住む地、伊予と阿波の境界の地、学問の神様の眠る地、かつて幕府から西洋人との交流が唯一許されていた地、ニニギの天孫降臨の地、古代の杉の大樹が生きる島、希少な兎の棲む暖かい南の島、琉球より古き時代の古都、山猫の棲む暖かい密林の島等にあります。故郷へ帰還したい英語圏の国の方々は、これらの地を経由して行きたい場所を目指してください。日本の復興を手伝いたいという方は残っても構いません」
動画のナレーションEN「以上で魔法の説明を終了します。ご視聴ありがとうございました」
そして、パドリグ含む椅子に座っていた人達のほとんどは施術意思表示確認所へ向かう。
route2へ続く