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8. 転生するということ

「性別が変わっちゃった人は初めて会ったわねえ」


 食事を終え、お茶をいただきながら転生前のこと、転生後から今までの流れを説明し終えたところ。

 転生という現象自体が特別なことなんだろうけど、そうしみじみ言われると改めて、僕はなぜ女性になってしまったのか頭を抱える。

 

「若返ったという方はよくいらっしゃるんですけどね」

「そうなんですか?」

「老衰で亡くなった場合もあるからかもしれないわね」

「なるほど、そのまま転生してたら身体が持たないですもんね……」

「転生者だと自覚があっても、明かさない方もいらっしゃいます。多くはご自身の状況がわからず、役所の人が聞き取りしていく中で発覚するんですけど」

「それは、そうかもしれません。僕のいた世界では『転生』という概念自体が特定の宗教に依っている考えで、生まれ変わりを信じていない人もいますから」

「アルスターでも同じよ、通常、命は失ったら二度と戻らない。人も魔物も。……ああ、そうだ、なので先に伝えておかないと」


 


「転生者だということは、無闇に話さないようにした方がいいわ」


 


 ――――明らかに空気が変わった。

 肌がピリピリと泡立つ。

 

「…………なぜ、でしょうか」

「シオちゃんのいた世界では、生まれ変わったとか、死後の世界を見た……と言う人はいた?」

「会ったことはありませんが……そういう話だけは聞いたことがあります」

「その後も無事だった?」

「生まれ変わったとか言っていた人達ですか? いや、その後のことまでは……。……どういうことですか」


 エアリアさんもキャミルさんも沈痛な面持ちだ。

 その後? その後なんて……生まれ変わりを実証できるものでもないし、嘘とまでは言わないけれど、時間とともに忘れられていくことがほとんどじゃないだろうか。


「生まれ変わりたいと願っている人は、想像以上に多いの。転生者の研究をしている施設もあるわ」


 研究。転生者の……人間の研究?

 健康診断や血液検査をする? 治験みたいなものだろうか。いや、息を吹き返すための研究なんて、何をするかわかったものじゃないのでは。

 例えば――あえて命をおびやかす、とか。

 おびやかすで済めばマシかもしれない。



 

 だって転生者はみんな、一度死んでいるのだから。


 転生の研究をするなら、もう一度。


 アルスターで死んだらどうなるのか、試すんじゃないだろうか。



 

「……脅かしてごめんなさい。伝わったみたいで良かったわ。……でもちょっとやりすぎたかしら」

「し、シオさん、エアリアさんは意地悪で言ってるんじゃないんです! 転生者の方がいなくなった事件があったから、役所に届出するようになったくらいなんです。心配だからなんですよ」


 ああ……「そういうもんか」と思っていたけれど、しっかり前例があったからなのか。

 さっきから悪寒が止まらない。

 転生者だと知られたら、命を狙われる理由が増える……そういうことなのだ。

 

「シオさん、大丈夫ですか……?」

「だ、大丈夫です。少なくとも、お二人が僕のことを思って教えてくれたのは理解しています。

 内容が内容だけに、だいぶビビってはいますけど……」

「研究と言ったけれど、転生前のことやきっかけを聞き取ることが中心なの。調査機関と言った方が適切かもね。危ないことはしないはずよ。

 たださっきも言ったけれど、一度失った命を取り戻したということは、嫉妬とか羨望とか、健全じゃない思いを向けられる可能性がある。

 ……実際にそういう思いをした転生者がいるの。だから気をつけてね、という程度に心に留めておいて」

「ありがとうございます、わかりました」



 

「それに転生者がいなくなったっていうのも、魔物に襲われたという方が現実的だしねぇ」

「行方不明になった場所が確か、デスベアーの巣がある危険地帯だったんですよねぇ」


 そっちの話の方がよっぽど注意じゃないのか。

 なんだデスベアーって。凶悪な名前しおって。

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