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幸か不幸か
「……ふんふ〜ん」
自分でも相当珍しいと自覚しつつ、鼻歌を奏でつつ目的地へと向かう私。目的地とは、不動産店――18になった私の、新たな居住を探すためだ。
そして、これが成人を迎えた昂揚感の理由で。成人になったということは即ち、少なくとも表面上においては責任ある社会の一員と見做されるということ。それが幸か不幸かは、人により見解が異なるのだろうけど――少なくとも、私にとって幸であることに疑いの余地などない。だって、もう私は立派な社会の一員――親の承諾などなくとも、自分の名義で賃貸契約できるようになったのだから。