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誕生日
「……その、今までありがとうございます、お母さま。それでは、行って参ります」
「ええ、行ってらっしゃい百桃。きっと最初は大変だと思うけど、しっかり頑張りなさい」
「はい、ありがとうございます!」
それから、およそ二年半が経過して。
開いた扉の外にいる私に、玄関から穏やかに微笑み鼓舞の言葉をくれる母。そして、そんな母に再び深く頭を下げ感謝を告げる私。本日は、4月20日――私の誕生日だ。
とは言え、一般的には記念すべきとされているであろう誕生日に、私自身何かしら思い入れがあるわけでもない。だけど、今日は……今日この日だけは、これまでの人生に覚えがないほどの昂揚感が、さながら滝の如く全身を駆け巡っていた。
だって、今日を以て私は18歳――心底、本当に心底待ちに待った成人をようやく迎えたのだから。