表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

オレはまだまだ若いんだ

作者: ヌベール

汚い話で恐縮だが、結婚して初めて、妻に足の爪を切ってもらった。


母が、訪問看護師にいつも爪を切ってもらっているのを見て、歳をとると何でも人にしてもらうんだな。本人は幸せなのかどうか分からないが、側から見れば至れり尽くせりだなあ、などと思っていたが、同時に、私はかなり前からひどい腰痛持ちなので、足の爪を自分で切れなくなるのも時間の問題だな、と思っていた。


今、母に施設に入ってもらうつもりで,手頃なところを探している。

いわゆる老人ホームである。

母が少しかわいそうでもあるが、ここまで何も自分で出来なくなると、もうそういうところのお世話になってもらわないと、とても私1人では面倒見きれない。

母がそういう施設で生活することに納得してくれるかどうかが問題だが、しかし納得しないとしても、無理にでも入ってもらわないとどうすることもならないのだ。


今回、そんなこともあって、久しぶりに自宅で家族と1日ゆっくり過ごす時間が持てた。まだ母は施設に入ったわけではないが、ショートステイというお泊まりに、ちょっと長く行ってもらったのだ。


で、私は手の爪を切りながら妻と話をしていたのだが、自然に話が足の爪のことになった。


年とったら、お互いに相手の足の爪を切ってあげないといけないかもね、と、そんなことを話すうち、妻が、私に切ってあげようか、と言ったので、私はついつい妻の言葉に甘えてしまった。

妻は丁寧に、私の足を掴みながら爪を切ってくれた。

ありがたくて嬉しかった。

しかし、とうとうそんな時が来たのか? と、ちょっと複雑でもあった。

普通なら,まだまだそんな歳ではないのではないか?

しかしこうして一度切ってもらったが最後、これからは毎回妻に頼むことになるかもしれない。

腰は随分楽で、本当にありがたいのだが、どこか納得できない気持ちもある。

ついにまた一歩、老境に足を踏み入れてしまったという、悔しさからくるものかもしれない。


母はもう下のことも私がいなければ解決できない。

しかし私は、どんなに歳をとっても、そこだけは絶対そうならないと自分で決めている。

そこだけは、絶対妻に迷惑をかけない。ガンにも絶対ならないし、認知症なんてもってのほかである。

どんなに強がってもそうなる時はなるのだと人は言うだろうが、私は絶対ならない。と、思う。


メタボなんて自分の美学が許さない、とカッコつけて強がってきたら,身長の割に未だにウエストは85センチを超えず、息子のズボンさえ履けるように、人間気の持ちようだと思っている。


だから、絶対私は死ぬまで、下の世話など人にさせないし、ボケない。

そして妻の面倒を見てあげるのである。


志だけでも、高く持つのである。うん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ