８
「高位の魔導具の中には、己の意思を持つものが存在し、使用者を選びます。リョウ様は、その銃に持ち主として、認められたという事ですね。おめでとう御座います」
そう言って、ミリィさんが無表情で、パチパチ拍手してくれる。
「意思が有って、持ち主を選ぶって？じゃ、持ち主と認めない者が使用すると、どうなるんですか？」
「こうなります」
ミリィさんが、俺の手からルシファーを受け取り、片手で持って右半身で構えて撃つ。
チュンと鋭い音がしたが、ターゲットに当たっていない。
「自前の銃を使うと、こうなります」
ミリィさんは、ルシファーを近くにあるカートに戻し、右腕を伸ばしてカシャンと音をさせる。
腕から銃が出て、チュュュュュン
と音をさせる。
音が連続して聞こえるって、連射？
ターゲットを見てみると、ど真ん中に穴が１つ空いてるだけだ。
「100発、連射してみました」
ワンホールショット？！
アニメ以外で、こんなの初めて見たよ。
スゲぇな。
「此れが、認められ無かった結果です」
なる程ね。
俺みたいな、銃の素人が初めて撃っても、ど真ん中に命中する。
持ち主と、認められたからか。
「次に、刀の方も試してみますか？」
試し斬りも、出来るの？
「はい、お願いします」
ミリィさんが、再度パネルを操作する。
今度は、６畳位の部屋になり、真ん中に、１本の柱が立っている。
ミリィさんは、俺の左後ろの辺りに立って見ている。
俺は、カートから刀を取り、腰を落として構える。
あれ？
帯を締めていないのに、帯に刀を差した様な感じになっている。
不思議だ。
此れも、俺を認めてくれてるからか？
俺は、居合道の先生から教わった事を思い出し、一気に抜き打つ。
ヒュッと音がして、柱の真ん中から上が、斜めに切れて落下する。
逆袈裟斬りで、斬ってみた。
久しぶりの感覚だったが、上手くいったな。
「お見事です」
今度は、拍手は無かった。
「此方は、胴田貫と言います。因みに、此方も意思の有る、高位の魔導具です」
同田貫じゃ無くて、胴田貫なんだ。
「此方で宜しければ、御主人様宛に請求書を送り付けておきます」
「ミリィさん、有難う御座います」
「次は、防具を見ましょう」
パネルを操作して、店内に戻ると、カジュアルな服コーナーに連れて行かれる。
防具の前に、先ずは下に着る服なのかな？
「リョウ様は、防具と聞いて恐らく、鎧や兜等を想像しているかと思いますが、服が防具を兼ねている物があるのです。勿論、鎧兜も有りますので、人によって好きな物を使用します」
魔法科学って凄いな。
「リョウ様には、私の見立てで揃えさせて頂きました」
俺の周りが、眩く光る。
光が収まると、俺の着ていたジャージから、上は黒いセンスの良い革ジャンと、インナーは黒いシャツ、ズボンはジーンズ、靴は新しいスニーカーになった。
「全て魔法科学の防具で、それぞれに軽量化が施され、魔法防御及び物理防御が付加されており、筋力を自動で強化する機能と、全天候で体温を一定に保つ機能も有ります。後、オートリペアとクリーン能力、靴は脱臭機能も有ります」
そう言って、ミリィさんの光学パネルで、俺の着ている服を見せてくれる。
此れは、凄いな。
この世界に来てから、驚きの連続だ。
服の重さを感じないし、ジャージと違って、温度の変化も感じなくなった。
何より、服のセンスが良い。
「ミリィさん、本当に有難う御座います。カッコいいですね」
「喜んで貰えて、良かったです」
ミリィさんの表情が、先程と同じで、ちょっと柔らかくなった気がする。
驚きついでに、必要最低限の知識の中には、光学パネルの使用方法も入ってた。
今更だが、ついさっき気が付いた。
パネルを出現させ、情報を読んでみる。
確かに、所持金100万と出ている。
俺は、武器屋のカタログをパネルに映しながら、商品を選ぶ。
「コレが、良いかな」
俺は、この世界で初めて買い物をした。
自動カートに商品が載せられ、此方にやって来る。
「メガネ？」
「はい。今日はミリィさんに案内やら買い物で、お世話になったので俺からのプレゼントです」
そう言って、俺は運ばれて来た赤い縁のメガネを、ミリィさんに手渡す。
「ミリィさんみたいな美人には、このメガネが凄く似合うと思うんですよね」
「私に、このメガネを掛けろと？セクハラで、訴えますよ？でも、有難う御座います。大切にします」
そう言って、メガネを掛けたミリィさんの頬に、ちょっとだけ赤みが入ってる!
これは、萌だ！
ツンデレ有難う御座います。
因みに、このメガネの能力は、常時魔力回復がメインに、後は妖艶と賢く見える、だそうだ。
