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「此方が武器屋になります。武器だけで無く、防具やアクセサリー等も揃っていますので、お勧めです」
冒険者ギルドがある異世界、そりゃ武器屋とかもあるよね。
ホームセンターの様な武器屋を見ると、獣耳と尻尾が付いてる男の獣人と、身体が透けて半透明な、女ゴーストの若いカップルが居る。
二人で同じ装備を着けて、何やら楽しそうに笑って商品を眺めている。
装備で、ペアルックか?
リア充、爆発しろ!
「チッ、仲が良いカップルですね」
ミリィさんが、無表情で武器屋を眺める。
あれ?
舌打ち?
「私は御主人様から、プレゼントを貰った事なんてありません。リョウ様、恋人にプレゼントの一つも渡さない男って、どう思われますか?」
うわぁ~、恋人の愚痴が始まったよ。
「いやぁ~、俺だったら記念日とかは、プレゼント渡しますね。まぁ、金があればですけど」
「そうですか。そうですよね。言い忘れていましたが、リョウ様には支給金として、現在100万円が入金されています」
「100万?支給金って、そんなに貰えるんですか?」
「はい。毎月100万円が、1年間振り込まれます。此れは施設に保護された者に、必ず適用されるものです」
マジか?
今の俺、超金持ちじゃん?
「ミリィさん、武器の所持は冒険者登録してないと、駄目なんですか?」
「いいえ、基本的に施設や街の外に出るならば、武器防具を身に着けますので、所持は違法ではありません」
「じゃ、武器屋に寄っても良いですか?」
「はい、構いませんよ」
前世で武器の所持は、違法行為になりかねない世界だったからね。
新しく始まる冒険の為に、装備品を調達しよう。
「うわ、スゲぇいっぱい武器がある」
目を輝かせ子供みたいな反応だが、ホームセンターみたいな店内に、様々な武器防具が陳列されている。
何が良いかな、やっぱり銃かな?
剣と魔法の世界ってのも、悪くないな。
「宜しければ装備品を、お見立てしましょうか?」
アッチにウロウロ、コッチにウロウロする俺に、ミリィさんが声を掛けてくれる。
「はい、お願いします」
「何か好きな物は、ありますか?」
「銃は好きですね。後、刀も好きです」
前世では数えると直ぐ終わるマトモな人間に、居合道の先生が居た。
この先生、近所の子供に無料で、居合道を教えてくれる先生だった。
覚えの悪い俺に、決して怒らず褒めて教えてくれた。
才能とは、同じ事を飽きずに続けられる事だと先生は言って、お前は才能があると褒めてくれた。
俺は褒めて貰えるのが嬉しくて、よく先生の所に通っていた。
禄に面倒をみず放置し、我が子に関心を持たない親の側に居たく無かった。
でも、俺が中学生の時に、先生は亡くなってしまった。
先生の前では笑顔の時もあったが、それが無くなる。
無表情で居て、出来るだけ一人で過ごす。
前世で、俺が人前で楽しそうに笑ったのは先生が最後じゃ無いかな?
「銃と刀ですか・・・」
なんか、考え込んじゃった。
ミリィさんが、光学パネルを出現させ、指で操作する。
「此方は、如何ですか?」
ミリィさんがそう言うと、自動で動くカートが近寄って来た。
カートの上には、黒いオートマチック拳銃が1丁と、黒鞘で柄頭が少し丸みを帯びた刀が置いてある。
カッコいい。
最初の感想は、これだった。
「手に持っても、大丈夫ですか?」
「はい、手に取って感触を確かめて下さい」
では先ず、オートマチック拳銃から。
好きとは言ったが、拳銃に詳しい訳じゃない。
好きなアニメの主人公が、使っている銃が好きってだけだ。
手に持つと、グリップが手に吸い付く様な感じで、重さを感じない。
何だろう?
不思議な感覚がする。
何ていうか、運命の出会い?
そんな感じだ。
「名前は魔法銃ルシファー、弾丸は使用者の魔力を使用し、余程の事が無い限り、オートリペアで修復する逸品です」
スゲぇ、コレ欲しいな。
「でも、お高いんでしょう?」
「はい、代金は御主人様に付けておきますので、気に入ったのならば購入して下さい」
「え?いや、河野さんに確認取らないと不味く無いですか?」
「良いんです。恋人にプレゼントの1つも寄越さない人間には、良い罰になります。後、購入前に試射も可能です」
マジで?
試し撃ち出来るの?
「じゃ、試射します」
ミリィさんが、光学パネルを指で操作すると、正面の陳列棚が無くなり長い廊下の様な場所になる。
奥の方に、ターゲットが設置されている。
大体、100メートル位かな?
ミリィさんは、俺の後ろに立ち「どうぞ」と声を掛けてくれる。
銃なんて撃った事が無いが、取り合えず左足を前に出し構えてみる。
ターゲットを見ると、目の前にあるかの様に見える。
あれ?
こんなに近かった?
息を吸い込み、引き金を引く。
チュンと、鋭い音がしてターゲットの、ど真ん中に命中する。
「お見事。その銃は、リョウ様を気に入った様ですね」
え?
俺が気に入るじゃ無くて、銃が俺を気に入る?