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さっきの話から考えて、施設と聞けば建物を想像するよね?
俺は、建物を想像してた。
「・・・街だ」
「違います。施設です。施設内に街があります」
うん。
普通に考えると、街の中に施設があるよね?
あれ?
違ったっけ?
部屋から一歩、外に出たら街だった。
それは、まぁ建物から出れば、街の中ってのも頷ける。
でも、俺が出て来た場所が、見当たらない。
扉とか、開いた覚えもない。
「魔法科学による、転移です」
おぉ~、魔法科学!
流石、異世界。
やべぇ、ウキウキしてきた。
後は、ウォッチングだね。
お昼休みじゃ、無いけど。
キョロキョロ周りを見ていると、ミリィさんに「行きますよ」と促される。
ミリィさんの後を歩いていると、ミリィさんが色々と説明してくれる。
「此方に見えますのが、図書館です。様々な文献を、取り揃えています。他にも、映像資料等もあります。全て無料で、閲覧可能です。但し破損した際は、弁償金が掛かりますので、御注意下さい」
ふむ、図書館で色々な資料を漁るのも、悪くないな。
何せ必要最低限の知識しか、無い状態だからな。
情報収集は、大事だ。
「次に、此方を御覧ください。此方は施設ランドです。様々なアトラクションやテーマパークをメインに営業しています。お土産等のお買い物は、此方を御利用されると全国的にも有名な為、大変喜ばれます」
観光ガイド宜しく、説明してくれるミリィさん。
何気なく横顔を眺めると、全く表情が変わらない。
でも、不気味な感じは一切しない。
美人だな、と思う。
声も凄く綺麗な声で、まるで声優さんが喋っているのかと思う。
声優さんを、起用してるのか?
あの中年、本当に変態だな。
狙った様に、俺の好みを突いてくる。
ミリィさんに、「クッ、殺せ!」とか言わせてみたい。
「・・・リョウ様、私に対して不穏な思考をされている気がします。セクハラで訴えますよ?」
立ち止まり、俺の顔をジッと見つめながら言う。
「ミリィさんは、とても可愛いと思いますが、笑顔をまだ見れていないのが非常に残念です」
「私の清楚で可憐な、可愛い笑顔が見たいだなんて、セクハラですか?訴えますよ?」
ちょっと待って、可愛いと言ったが清楚と可憐は言って無いし、何より訴えますよ?って、口癖なの?それとも、流行りなの?
「因みに、訴えますよ?は、口癖でも、流行りでもありません」
まさか、心を読まれた?
「心を読んだ訳では無く、表情を見ていれば、大体の事は察しが付きます。先程も、私の顔を劣情を抱く瞳で、見ていましたね。目で犯されたと、訴えますよ?」
「ごめんなさい。決して、そんな思考はしていません」
「そうですか、私には全く魅力が無いと、そう仰るのですね?」
「いえ、あの、そんな事は無いですよ?ミリィさんは、とても魅力的だし、可愛いですよ?」
「有難う御座います。ですが、もう少し語彙力を鍛えた方が、女性に喜ばれると思います」
ミリィさんの表情がフッと、柔らかくなった気がする。
今、笑った?
微笑んだ?
何?デレちゃったの?
「別に、デレた訳ではありません。ちょっとした、冗談です」
「やっぱり、思考を読まれてる」
「違います。表情から、判断しただけです」
何故、思考がバレる。
前世じゃ、常にポーカーフェイスだった筈なのに。
いや、ポーカーフェイスと言うよりは、無表情だったな。
年齢を重ねるごとに、人と接する時は、出来るだけ感情を殺して、表に出さない様にしていた。
人と関わる事が、面倒臭かったし、何より一人で居る事が楽だった。
でも、この世界は楽しい。
表情に、出てしまうのも仕方無い。