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「あの、大丈夫ですか?」
「すみません、落ち着きました」
素で話すと、普通の人だな。
「転生者に会えるとは、思って無かったです」
「神様に転生者に会うかもと、言われませんでしたか?」
「言われたと思うけど、今まで転生者には会わなかったので、俺以外に転生者は居ないのかと思ってました」
詳しく話を聞くと店員さん改め店長、弘崎君が転生した時の年齢は俺より若く、転生した時期は俺と同じ位だが、この世界では先輩だ。
「俺、この世界に転生して新しい両親の元で生活して20年、やっと転生者に会えました。本当に、嬉しいです」
ミラージュスパイダーの糸を加工して貰っている間、色々と話を聞いてみた。
弘崎君は、前世で特撮ヒーロー物やアニメが好きで、此方の世界に来てからは、此方の世界のアニメや特撮を子供の頃から観ていたそうだ。
しかし、前世のアニメや特撮の話が出来ない。
それがずっと、ストレスだったらしい。
其処で、彼は考えた。
自分が店を開けば、他の転生者に会えるのでは?
そして彼は4年前に、ミラージュスパイダーの糸を加工する店を開いた。
話を聞く中で、共通点がある事に気付いた。
前世では、親が碌でも無い屑である事や、人と関わるのが嫌になっていた事。
リリーさんには、詳しく話を聞いていないが、ひょっとすると彼女の前世もそうなのか?
「今の御両親は、良い人ですか?」
「はい!凄く、いい人達ですよ!」
そっか、それは良かった。
この世界でも、酷い目に合っていたら救われないからね。
店の飾り棚を見ると、モンスターガチャのフィギュアが飾ってある。
「弘崎さんも、此のフィギュア好きなんですか?俺は、つい最近見付けて・・・」
「それ、俺が作ったキャラクターです」
マジか?!
制作者は、転生者で中二病だと思ってたけど、やっぱりそうだったか。
「そうだったんですか、俺はフルコンプするまで、回しましたよ」
「そうな風に言って貰えると、嬉しいです。有難う御座います。出来上がりました!」
加工して貰った糸を見てみると、キラキラした綺麗な石や認識票を入れるケースが、お洒落に彩られた可愛いネックレスになっている。
「此れは、素晴らしい!」
「有難う御座います。ちょっと、お安くしておきます」
「そうだ!安くして貰ったお礼に、一緒にお昼ご飯、食べませんか?とは言っても、この辺りのお店を全く知らなので、お店を選んで貰わないといけませんが、御馳走様しますよ?」
「はい!行きます!」




