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昨日、説教が終わってからリリーさんに、珊瑚について色々と質問した。
基本的に人間と変わらない物を食べて良いし、成長期なので食べれるだけ食べさせても良い。
珊瑚は自分で考えられるから、問題ないとの事だった。
人間であれば食べ過ぎは良くないが、成長期のドラゴンは人間以上に、エネルギーを必要とするとの事。
今は俺より小さいが、成長すれば俺が見上げる様になるだろう。
そう考えれば、合点がいく話だ。
食事以外にも、運動は欠かさずさせる様に言われた。
体を動かすのは成長するにあたり、必要不可欠な事だと教わった。
道を歩きながら、昨日の教えを思い出す。
「しかし、また二人だけで、話をする事になるとはな」
「全くです。まぁ色々と、反省する事は多いですね」
「それで君は、今後どうするのかね?」
「今後ですか?先の事なんて、まだ考えていませんよ」
「時間は、あっという間に過ぎていくぞ、光陰矢の如しだな」
分かっているさ、俺はアンタより長く生きている人間だからね。
だが、そんな事は口にしない。
俺達は今、買い物に行く為に道を歩いている。
誰と居るのか?
「河野さんこそ、決めたんですか?」
「そうだな、買い物の後は考えていないよ」
光陰矢の如しとか言っといて、何も無いのかよ。
俺は、珊瑚の認識票を付ける紐を作成して貰う為に、独り街に出たが直に河野さんと出会した。
珊瑚に、昨日の事は謝ったが御機嫌斜めの為、カオリに任せ別行動だ。
カオリ曰く、俺は女心が解ってない駄目人間らしい。
今迄、独りで居た事の弊害か。
つい思った事を、口にしてしまったんだよ。
「俺は、此処だ。ミリィが機嫌を直してくれると良いんだが・・・」
「ご武運を!」そう言って俺は、帽子を被っていないが挙手の敬礼をする。
「うん。まぁ頑張って、色々と見てくるよ」
そう言って、河野さんは店の中に入って行く。
俺は先程、河野さんから聞いた店を目指す。
「ミラージュスパイダーの糸なら此処さ」と言って、教えて貰ったのが、『アクセサリーショップ・レオパルド』
何か非常に、触れてはイケない感じがするのは、俺の勘違いなのか?
到着し店の看板を見上げると、蜘蛛の糸が描かれ、アクセサリーショップ・レオパルドと書かれている。
此れって、どう考えても前世の映画とか、特撮を知ってる奴だよな?
俺は、そんな事を考えながら店の中に入る。
「いらっしゃい!地獄からの使者、スパイ」
「ちょっと、待った!その先は、ダメだ!」
腰を落とした独特のボーズで、危険な発言をする店員の兄ちゃんを俺は止めた。
この店員の兄ちゃんは、何時もこんな接客態度なのか?
「何故、止める?もしや、魂のソウルメイトか?遂に、この刻が訪れたか!」
やっぱりだよ、そんな気がしてたんだよなと、考えながら普通に話す。
「こんにちは、ミラージュスパイダーの糸を、加工して欲しくて来たんですが」
「ミラージュスパイダーの糸か?良かろう、品物は持ち込みか?無いなら販売もしている。因みに、俺は最強の糸使いだ」
うん?
店員の兄ちゃんが、更におかしな事を言い始めたよ?
「ミラージュスパイダーの糸は、有ります」
「フッ、君は転生者だろう?隠しても分かる!オレでなきゃ、見逃しちゃうね」
「はい、転生者です」
「隠しても無駄さ!そんな気がしていた。今日は、朝から胸騒ぎがして、あれ?あっさりと認めるの?」
「はい、それで加工はして貰えるんですか?」
「あ、はい、出来ます。それで、本当に転生者?」
「そうですよ?因みに、入って来た時の台詞は、特撮ですよね?後、店の名前は正確には、最後にンが付くんじゃ無いですか?」
「・・・やっと、やっと分かってくれる人に、巡り会えた」
咽び泣く店員の兄ちゃんを目の前に、俺は途方に暮れた。




