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白熱する名付け戦争を見つつ、俺はふと思い付いた事を口にした。
「珊瑚珠色から取って、珊瑚はどうだ?」
俺は、隣に座るドラゴンを見て言った。
「ピィ、ピピィ!」
「・・・気に入った、そう言ってる」
リリーさんの通訳により、白熱していた名前決めが終結した。
「じゃ、名前は珊瑚だな。宜しくな」
「ピィ!」
「ちょっと待って、リョウはパパなのに、ママになるの?欲張りよ!」
カオリが、混乱する様な事を言い出した。
「ですが、まだ奥さんの座は残っています」
ゴモリーさんが、不敵な笑みを浮かべる。
「確かに!その手があったか!」
と、ネアさんがガッツポーズをしている。
「ピィ!ピピィピィピピィ!」
「・・・なる程、それは良い考え」
「えっと、リリーさん?珊瑚は、何と?」
「・・・名前を考えてくれた皆に、感謝している。だから、皆ママだと言っている」
「そうか!では、俺もママだな?」
「ピィ!ピピィ!」
「・・・河野は、近所のおじさん。と、言っている」
「何でだよ?!俺も参加したよ?不慮の事故で、昏倒してたけど」
復活した河野さんが、訳の分からん事を言っている。
そもそも、あんた男だろ?
「近所のおじさんは、黙って下さい。訴えますよ?」
ミリィさんが、殺気立っている。
やはり、先程の発言はマズいよな。
触らぬ神に、祟りなしだ。
「すまない、ミリィ!俺が悪かった赦してくれ!」と、土下座する河野さん。
「さて皆さん、今回の催し物は終了しました。お疲れ様でした」
そう言って、サッサッと食堂を後にするミリィさんを「待ってくれ!ミリィ、捨てないで〜!」と、後を追い掛ける河野さん。
「あ〜、取り敢えず、夕飯食うか?」
「そうね。丁度いい時間だし、食べましょうか。ピィちゃんは、何がいい?」
「ピピィ!ピィ!」
「・・・パパと、同じ物がいいと言っている」
「俺と同じですか?」
「・・・ドラゴンは、人間と同じ物を食べても、問題無い」
「お姉ちゃんは〜、占い師だけど〜、テイマーでもあるからね〜、大丈夫〜」
意外な事実を、妹のマリーさんから聞かされた。
「テイマーの素質まであるとは、驚きました」
同じ転生者である俺には、此れと言って冴えた能力は無い。
「・・・人には、必ずいい所がある」
そう言って、励ましてくれるリリーさんに、俺は感謝した。




