41
「テイマーの部下から、話は聞いている。君の言っている事とドラゴンが言っている事に、間違いは無さそうだな」
アンダーソン少佐は、光学パネルを見ながら言った。
「本来、迷子のドラゴンは国で保護するのだが、ドラゴンが特定の人間に世話を頼むと言う場合は、それが尊重される。ドラゴンは君を気に入って、君を保護者にして欲しいと言っているそうだ。どうする?拒否権が無い訳じゃ無い。もし拒否するなら、国で保護する事になるが・・・」
「俺達が面倒を見るので、大丈夫です」
「そうか。では、宜しく頼むよ。現在、親ドラゴンの捜索をしている。発見次第、君に連絡するよ」
部屋を出た俺は、ドラゴンの保護者になった事の次第を思い返した。
「リョウ、どうするの?」
「うん、街に連れて行って軍に引き渡しだな」
俺は、レッドドラゴンの口に肉を入れてやる。
「ピ、ピピィ!」
嬉しそうに食ってるな。
特に、怪我をしている様子は無いな。
「しかし、何でドラゴンの子供が、こんな所に居るんだ?」
「そうね。親と一緒に居るのが、自然だと思うけど」
「お前、どうしてこんな所に居るんだ?」
「ピィ?ピー、ピィーピピィ!」
「・・・なる程」
「リョウ、判るの?」
「いや、さっぱり判らん」
頭が良くて、人間の言葉を理解しているのは良いが、如何せんドラゴンの言葉が通じない。
俺の後頭部に張り付いて、小さな羽をパタパタと動かしているドラゴンの子供を、街の手前でカオリに抱っこして貰う時に「懐かれたわね〜」と言われ、満更でもない気持ちになった。
街のシールドを潜り、巡回兵に声を駆ける。
「ドラゴンの子供を保護したんで、連絡して欲しいんですけど」
「ドラゴン?!ちょっと待って下さい!」
兵隊が、慌てながら光学パネルを出現させて操作している。
30秒程で兵隊がやって来る。
「また、君か?!」
エントを助けた際に会った、班長と呼ばれていた兵士の言葉にカチンと来た。
またって、何だよ?
俺は、何も悪い事はして無いけど?
「取り敢えず、基地に来てくれ」
軍の基地に着いて、ドラゴンの側から離れようとすると「ピィ?!ピギー!ピィ〜?」と、カオリの腕に抱かれていたドラゴンが、小さい羽を動かして飛び上がり、俺の後頭部に引っ付いて離れなくなる。
「大丈夫だ、何も怖い事はしないから安心しろ、肉食うか?」
俺が肉を出しても、食べようとしない。
モンスターテイマーの兵士に話をして、大丈夫だと言い聞かせる。
「この子は、貴方から離れたく無いと言っていますね」
「かと言って、一緒にって訳にはいかんでしょう?」
「そうですね。保護したドラゴンから、話を聞かないといけません」
「・・・俺は、この人達と話をしてくる。いい子にしてたら、御褒美に旨い肉を食わせてやる。だから、ちょっと待っててくれ」
俺はドラゴンを抱っこして、目を見ながら話す。
「ピィ?ピィピィ!ピィ」
どうやら、分かってくれたらしい。
ドラゴンと別れ、聴取終了後に先程の少佐との会話になる。
「あのドラゴンは、迷子なのね。今頃、親が探してるのかしら」
とカオリが、少佐から聞いた話をする。
「ピィ〜!」
部屋を出て基地の廊下を歩いていると、後頭部にドラゴンが抱きついて来た。
「待って〜!まだ、終わってないよ〜!」と、若い女性兵士がドラゴンの後を追い掛けて来た。
「に、認識票を着けて?じゃ無いと、パパとママの所に帰れないのよ?」と、ドラゴンに言う。
パパとママ?それは、実の親が見付かったって事か?
「あの、この子の親が見付かったんですか?」とカオリが、女性兵士に聞くと「いえ、まだです。パパとママは貴方達の事ですよね?」と答える。
俺達?俺は、まだ結婚すらしていないし、ドラゴンの隠し子が居るなんて事実は無い筈だ。
「私はテイマー部隊所属の者ですが、その子が話の途中で飽きたのか、『人間のパパとママの所に帰る!』と、部屋を出てしまって」
「ママ?!リョウ、どうしよう?結婚式の招待状は、誰に出すの?」
「うん、落ち着け。まだ慌てる時間じゃ無い。で、その子が俺達の事を親だと言ってるんですか?」
「はい、人間のパパとママだと言ってます。では、お父さん。この認識票を着けてあげてくださいね」
俺は、女性兵士に手渡されたドッグタグを見て思う。
何だ、この展開は?
その後、テイマー部隊の軍人から、ドラゴンが話した内容を聞いた。
「まぁ軍の方で、親探しをしていると言っていたし、見付かれば連絡が来るだろう」
軍の基地に到着後、魔導通信機の登録はしたし、少佐が連絡すると言っていたしな。
「よし!御褒美の肉を食わせてやるぞ」
「ピィ!」




