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「その他に、何か知りたい事は有りますか?」
「フシュー、『朝、食パンを口に咥えて慌てて道を走る君とぶつかって、お互いに転んじゃう、そんな事より手編みのセーターの威力は、冬眠し損ねたヒグマすら一撃必殺!!』は、どうなった?、プシュー」
「アレですか?アレは・・・」
何の話かと言うと、前世で人気のあったネット小説の話である。
「・・・作者が書くのを止めて、そのまま消えましたね」
「フシュー、そう残念、プシュー」
「リリーさんが転生したのは、幾つの時ですか?」
「フシュー、17の時、プシュー」
「そうでしたか。リリーさんは、アニメとか好きだったんですか?」
「フシュー、好きか嫌いかで言えば、大好物、プシュー」
「リョウ、お腹空いた」
欠伸して話を聞いていたカオリが、俺に昼飯の催促をする。
気が付けばもう昼飯か、楽しい時間は過ぎるのが早いな。
「すみません、リリーさん。つい話に夢中になってしまって。お昼ご飯、一緒に如何ですか?」
「フシュー、有難う、一緒に行く、プシュー」
今日も、リリーさんと一緒に行く事になった。
「フシュー、お勧めの店がある、プシュー」
「そうなんですか?では、そのお店にお願いします」
リリーさんは、店を小さく畳むと次元収納に仕舞った。
あの屋台、畳めたんだ。
ちょっと、驚いたな。
「フシュー、此方、プシュー」
俺とカオリは、リリーさんを追い2分程歩くと、一軒の中華料理屋に着いた。
「フシュー、此処は個室を頼める、プシュー」
「いらっしゃい!」
「フシュー、店主、何時もの部屋に行く、プシュー」
「はいよ!毎度あり!」
リリーさんが、店の奥の方に進み部屋に入る。
部屋の中は、広めの部屋で入口に衝立が置いてあり、部屋の中央にデカい円卓が置いてある。
「フシュー、適当に座って、プシュー」
リリーさんは、そう言って部屋の端に移動すると、魔導アーマーから出て来た。
「・・・やっぱり、脱いだ方が楽」
魔導アーマーから出て席に着いたリリーさんを、ついつい眺めてしまう。
「・・・また見てる、そんなに珍しい?」
「すみません。やっぱり、魔導アーマーを着ていない方が可愛いですね」
「・・・有難う。でも恥ずかしい」
そう言って、リリーさんは下を俯向いてしまう。
「リョウ、女性をジロジロ眺めるのは失礼よ?セクハラで訴えるわよ?」
カオリが、ミリィさんみたいな事を言うが、確かに失礼だな。
「すみません、リリーさん。カオリ、気を付けるよ」
「いらっしゃいませ!リリーさん」
「・・・フォンファ、今日は、友達も一緒に来た」
「有難う御座います!いらっしゃいませ」
「はじめまして、リョウです。此方は、相棒のカオリです」
「はじめまして!カオリです」
「はい!有難う御座います。フォンファと言います。ご注文決まりましたら、お呼びくださいね!」
フォンファさんが円卓に、お茶とメニューを置いて部屋を出る。
この店は、メニューを置いて行くのか、他の店だと大体ディスプレイで注文だが、コレはこれで珍しいな。
「・・・此処の店は、古風なやり方、前世を思い出す」




