36
翌朝、支度をしているとミリィさんが尋ねて来た。
「御早う御座います、リョウ様」
「おはようございます。何時も有難う御座います」
「今朝は、お迎えに上がった訳ではありません。軍から昨日の件で、お話があると・・・リョウ様、一体何をしたんですか?」
「いや、悪い事はしてないですよ?」
「犯罪者は、皆そう言います」
「え?!ちょっと待って!俺、犯罪者扱い?」
「リョウ様が私の事を見る時、必ず破廉恥な目で見ています。ですから、何か仕出かさないかと日々、心配しておりました」
「誤解だ〜!」
「大丈夫です。ちゃんと、軍の基地まで連行してあげますし、面会の時にオヤツも持って行きますからね?」
「俺の扱い、ひでぇな?!」
「で、何をやらかしたんですか?怒らないから、話して下さい?」
メガネをクイッとしながら、俺に問い掛けるミリィさん。
此れって聞いた後に、怒り出す人と同じ言葉だよね?。
まぁ、悪い事はしてないから全て話す。
「その連中は、レント狩りですね」
「レント狩り?」
「はい。レントが保護対象である事は、ご存知だと思いますし、危害を加えれば重罪になる。此処までは宜しいですね?」
「はい」
「レントは、多大な魔力を保有する木のモンスターです。レントの身体を使用した工芸品や魔導具は、なかなか出回らない為、高値で取引きされます。本来は、レントの遺体を回収するか、レント自身が枝を相手に渡す等しないと、レントの身体は手に入りません。しかし、レントを殺害して身体を切り刻めば証拠は残らない」
「なる程、そう言った事をする連中が、レント狩りですか」
俗に言う、密猟者か。
しかし、随分と街に近い所で犯罪行為に及んだな。
直ぐに、発見されるだろうに?
「施設内は安全ですが、犯罪者が居ない訳ではありません。それから犯罪組織は施設の外に、拠点を構えている様です」
何処に行っても、犯罪は無くならないか、まぁ全ての人間が善人では無いからね。
「カオリを、起こして来ますね」
「分かりました」
カオリを起こして、外に出ると冒険者3人娘が、ミリィさんと話している。
「おはようございます。今日も、有難う御座います」
「わ、私は冒険者仲間で後輩のリョウを、気にしてるだけで、別に」
「おはようございます。リョウさん、朝ご飯に行きましょう?」
「リョウ、おっは〜!ご飯だよ〜」
「皆さん、おはようございます!マリーさん、お姉さんは一緒じゃ無いんですか?」
「カオリ、おっは〜!お姉ちゃんは、先に食べて〜、もう仕事に行ってる〜」
大食堂に向かいながら、「皆さん、今日はどうされるんですか?」と、尋ねてみる。
「私達は、今日も外に狩りに出るわ。リョウは?」と、ネアさんが答える。
「俺は此れから、軍の基地に行きます」
「リョウさん、何かされたんですか?」
「ゴモリーさん、実は昨日・・・」
大食堂の席に着いて、昨日のエント狩りの話をする。
「お手柄ですね!リョウさん」
「そんな事が、有ったのね」
「リョウとカオリ〜、凄いね〜」
「褒めて頂き、有難う御座います」
朝食を終わらせ、ミリィさんと共に建物の外に出た。
「リョウ様、今日は車で行きましょう」
ミリィさんが手を上げると、1台の無人タクシーが停まった。
施設内を往来しているタクシーやバスは、全て無人車両を使用しており5分程で到着した。
「おはようございます。アンダーソン少佐は?」と、ミリィさんが門番の兵士に話し掛けると、敬礼して連絡を取っている。
暫くすると、建物の中から兵隊の1人が迎えに来た。
「お待たせしました。此方にどうぞ」
随分とVIP待遇だな。
応接室に案内され、部屋に入る。
「おはようございます。ミリィ殿も御一緒とは、驚きましたな」
「おはようございます。少佐、リョウ様は最近、施設に入られた為、同行しました」
「そうでしたか、そちらにお掛け下さい。今、お茶を用意します」
そう言ってアンダーソン少佐が、自らお茶の用意する。




