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「フシュー、フィギュア?、プシュー」
「そうなんですよ、昨日やったガチャガチャなんですけどね、ちょっと被ってしまって」
「フシュー、有難う、プシュー」
「モンスターのディフォルメされたフィギュアで、なかなか可愛いんですよ」
「フシュー、食べ終わったら、見せて、プシュー」
それから、20分程で山盛りのパンは無くなった。
主に、占い師さんとカオリが消費したが、俺も食べたよ?
揚げウインナーパンに唐揚げパン、カレーパンにクリームコロネ、後はコーヒ牛乳。
腹一杯だ。
で、テーブルの上に残りのフィギュアを並べる。
「フシュー、此れが良い、プシュー」
占い師さんが手に取ったのは、【お気楽極楽、インフェルノ・アルマジロ】だった。
インフェルノ・アルマジロは、日本には棲息しておらず、基本的には大人しく、此方が危害を加えなければ攻撃はして来ないが、怒らせると止まらない危険なモンスターだ。
インフェルノ・アルマジロの攻撃方法は、身体を丸めての転がり。
全長15メートル程の鉄球が、猛スピードで突っ込んで来て、なかなか止まらない様を想像して欲しい、恐ろしいと思わないか?
甲羅が鋼鉄並みの硬さで、死骸から甲羅を採取し様々な物に使われている。
【お気楽極楽、インフェルノ・アルマジロ】だが、ドラム缶風呂に入り、頭に手拭いを乗せて、至福の顔をしているフィギュアだ。
ほのぼのとしいて、可愛い。
「パンの御礼です、どうぞ」
「フシュー、有難う、プシュー」
「いえ、此方こそ、有難う御座います」
「リョウ、美味しかったね。御馳走様でした!」
「フシュー、またね、プシュー」
「はい、また」
俺は、あの占い師さんに大分慣れたな。
人を見た目で判断するつもりは無いが、でも第一印象ってのはデカいからな。
まぁ、話せば分かるって事だよな。
前世じゃ、考えられない事ではあるけどね。
前世では、人の話を聴かず、自分は間違って無い、他人が間違っている、自分は何も悪く無いと、決して己の非を認め無い、そんな人間ばかりだったからな。
さて、昼飯も済んだし外に出るかな。
「カオリ、此れから外で狩りをしよう」
「うん、リョウからのプレゼント試せて無いからね」
街の外に出て、林の中に入るとクリムゾン・キラー・ビーが巣作り真っ最中だった。
クリムゾン・キラー・ビー、体長50センチ程の蜂のモンスターで、毒針と顎で攻撃してくる。
蜂蜜を取る為に、モンスターテイマーが捕獲する事もあるが、繁殖能力が高い為、基本的には発見次第駆除だ。
「カオリ、丁度いい獲物がいる。俺が、狙撃で誘き寄せる」
「分かった。じゃ、此処で待ってるね」
俺は、ルシファーを構えて狙いを定める。
チュンと鋭い音と共に、1匹の蜂の頭が砕け、残りの群れが一斉に飛び上がり、顎で警戒音を鳴らしながら、カオリの方に向かって行く。
カオリは、魔導光学ソードを構え、最初の獲物を両断した。
カオリの周りは、蜂だらけで姿が見えない状態だったが、数秒すると斬り落とされた蜂が山になり、襲撃する数が減って来た。
「ふぅ、こんなもんね。リョウ、終わったわよ!」
そう言って、最後の1匹を斬り捨てる。
此処までの時間は、約1分ちょっと、始末した蜂の数は少なく見積もっても、500は有りそうだ。
「カオリ、使い心地はどうだ?」
「うん、凄く使い易いし、何より刃毀れが無いから、幾らでも斬れるわね!」
カオリが、始末した蜂を次元収納に仕舞いながら答える。
喜んで貰えて、何よりだ。