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パン屋さんに到着。
此処のパン屋さんは、外にテーブルとか置いてあるから、オープンテラスとか言う店だよね?
前世じゃ、こんなリア充御用達の店には行った事がない。
店内でも食べれるけど、天気が良い今日みたいな日は、外で食べるのも気分が良さそうだ。
なんて、思ってたら「フシュー、プシュー」と、不穏な音がする。
真後ろに、立たれている!
「か、カオリ、今日は天気も良いし、他の場所に行こうか?」
ちょっと声が、裏返ってる。
「フシュー、昨日ぶり、プシュー」と低音ボイスで、滅茶苦茶逞しい手を俺の肩に置いている!
「昨日の占い師さん?こんにちは!」
カオリが、振り返り挨拶をしている。
「こ、こんにちは。いや〜、奇遇ですね〜。じゃ僕等は、此れで」
「フシュー、昨日は、ゴメン、お詫びに奢る、プシュー」
やべぇ、逃げられん。
「有難う御座います!リョウ、良かったね」
「う、うん。そうだね」
外のデカいテーブル席、パンを乗せたトレイがテーブルを埋め尽くし、様々なパンが山盛り状態になっている。
「此れ、美味しい〜!」
「フシュー、それはお勧め、でも、此方もお勧め、プシュー」
この占い師さん、ガスマスクみたいな仮面してるけど、どうやって食うのかな?と、思って居たら仮面の下に、パンを丸ごと入れたよ?
チョココロネが、一瞬にして無くなった。
俺は前世から大好きな、揚げウインナーパンを齧りながら、占い師さんを眺める。
この人、俺がパン1つ食う間に、チョココロネ、焼きそばパン、メロンパンと、次々に仮面の下に突っ込んで行く。
飲み物とか、どうすんの?
仮面の下にストロー付きのジュースを持って行って、下の隙間にストロー突っ込んで吸ってる?!
「フシュー、見詰められると、恥ずかしい、プシュー」
「いや、すみません。パン美味しいですね〜」
「フシュー、此処は、お気に入りの店、3日に一回は来る、プシュー」
「リョウ、お腹空いて無いの?食べて無いよ?」
カオリが、心配そうに聞いてくる。
「大丈夫だ、揚げウインナーパンが美味し過ぎて、感動したんだよ」
実際、揚げウインナーパンは、とても美味しかった。
俺はトレイの上にある、ハムサンドを取ろうとしたが、同じタイミングで占い師さんの逞しい手が、同じ物に伸びてくる。
手が触れ合い、お互いに時が止まる。
見つめ合う2人。
「ご、ごめんなさい!」
「フシュー、此方こそ、食べる?、プシュー」
「いえ、そんな申し訳ないですよ。俺は、カレーパンを貰いますから」
「リョウ、此方の唐揚げパンも、美味しいよ?」
「そ、そっか、じゃ唐揚げパンも貰おうかな?」
「フシュー、うん、食べて、プシュー」
決して、悪い人じゃ無いと思うが、如何せんマスクと体格にビビってしまう。
「フシュー、怖い?、プシュー」
「え?いえ、そんな事は無いですよ?親切にして頂いて、感謝してます」
「フシュー、昔から、怖がられる事が有ったから、気にしないで、プシュー」
ちょっと肩を落としている姿が、申し訳なくなる。
「そうだ!御礼に、フィギュア要りませんか?」




