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前世では、国家権力が大嫌いだった。
威張り腐った警察官とか、本当に嫌になるね。
だからといって、全ての警察官がそうじゃ無いでしょう?と、言われると思う。
けどね、嫌な思いをした事のある人間としては、気分が悪い訳ですよ。
「はぁ、嫌になるね」
「リョウの気持ちは、分からなくも無いけど、此処は違う世界よ?」
「うん、そうだな。俺は大人に、なり切れて無いな」
軍の基地で、取り調べの待ち時間にカオリと話していると、1人の兵隊が近寄って来た。
「お待たせして、申し訳無い。此方の部屋で、話を聞かせて貰えるかな?」
「へいへい、分かりました」
「リョウ!」
「分かったよ。どうも、すいませんね」
「いや、此方としては、エントを助けて貰って感謝しているよ。先ずは、発見した時の状況から話して貰えるかな?」
「外に出て、何気なく遠くを見たらエントが何かに襲われてるのを見たんで、近寄ってみたら男がエントを襲ってた。それだけです」
「なる程。その時、既にエントに傷は有ったのかな?」
「はい、私が彼より先に駆けつけたんですが、手斧で傷を負わされていました」
「失礼、貴女のお名前は?」
「先に名乗るのが、礼儀ってもんじゃねぇのか?軍人さんよ?」
「リョウ!すみません、私はカオリと言います」
「カオリさん、大変申し訳ない。私の名前は、メイガー・アンダーソン少佐だ。此処の責任者でもある」
「それで、リョウ君?君が、エントの治療した。此処までで、間違いは無いかな?」
「そうですね〜」
「それから、男の1人が負傷していたが、どういった経緯かな?」
「エントの治療してたら、目醒めて襲い掛かって来たので、自分とエントの身を守る為、攻撃しました」
「その時に相手の男は、武器を所持していたのかな?」
「手斧を持って、俺を殺しに来ましたよ?だから、足を斬って動けなくした。何か問題がありますか?」
「分かった。どうも有難う。協力に感謝する」
「じゃ、此れで終わりですね」
「あぁ、聴取は此れで終わりだ」
「じゃ、帰りますね」
「済まないが最後に、連絡先を教えて貰えないかな?再度、聞きたい事が有った時の為に」
「連絡先?無いですね。俺は最近、施設に入ったばかりなんで」
「そうか、では何か有れば施設に問い合わせるとしよう。有難う」
「失礼します。リョウ、ちょっと待って」
部屋を出た所で、カオリに呼び止められる。
「カオリ、早く行こうぜ」
「リョウ?貴方の態度は、褒められたものじゃないわ」
「・・・すまない。気を付けるよ」
「そうね、此処は前と違う。だから、今後は気分を変えて行きましょう?」
「そうだな。努力するよ」




