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朝食兼フィギュア譲渡会を終えた俺達は、歩いて街の外に出た。
さて、何処に行こうか?
「カオリ、何処か行きたい所はあるか?」
「昨日、リョウから貰った武器を使ってみたいから、モンスターが出るなら何処でも良いわよ?」
草原を眺めると、遠くでエントが何かに襲われている。
「カオリ、エントが襲われてる。行こう!」
そう言って全力で駆けるが、カオリの方が遥かに早く現場に到着する。
俺は、後30メートル程で到着する所まで来たが、見るとカオリが人を殴っている。
一体、何だ?!
何故、乱闘状態なんだ?
急がねば!
到着したら、既に戦闘は終了していた。
現場には、傷付いたエントが1体と、男が5人転がっている。
「カオリ、何が有った?こいつ等を、殴ってなかったか?」
「そうよ?私が全部、殴り飛ばしたの。こいつ等、エントを襲ってたのよ」
なる程、エントは保護対象のモンスターで、危害を加えた者は犯罪者として捕えられる。
早く回復魔法で傷を治そうと思いエントに近付くと、怯えて逃げようとする。
俺はエントに大丈夫だと話し掛けて、回復魔法を掛ける。
暫くジタバタしていたが、エントは此方に攻撃意志が無いと分かったらしく、大人しくなった。
「カオリ、すまないが巡回兵を呼んでくれないか?」
此の世界は、軍が警察業務も兼ねている。
だから、犯罪行為を発見した際の通報先は全て軍になる。
「分かったわ」
カオリが、走って街に戻って行く。
さて、エントの傷が大分マシになってきたな。
「痛え〜!クソが!」
と、男の1人が目を覚ました様だ。
「動かず大人しくしていろ、でないと更に怪我が増えるぞ?」と、俺は男に警告する。
「何だテメェは?さっきのクソ女の仲間か?」
「だったら、何だ?」
「ぶっ殺してやる!」
男が手斧を振り被り、襲い掛かって来た。
俺は、胴田貫を出して、男の足を斬り付けた。
「ギィ!あ、足が?!」
「さっき、クソ女と言ったな?その程度で済んで、有り難く思えよ?クズ野郎」
「痛ぇ、おい!大丈夫か?誰にやられた?さっきの女か?」
隣で寝ていた男が目を覚まし、怪我した男を見て騒ぎ出した。
「おい、お前!騒がず大人しくしていろ?でないと、そこのクズ野郎と同じ目に合わせる」
男は俺の言葉を聞き、息を殺して此方の動向を伺っている。
「リョウ〜!」
カオリが、兵隊と共にジープに乗って来た。
「エントが襲われていると通報が合って来たが、間違い無いか?何故、この男は怪我をしている?怪我の処置をしろ!」と、指揮官らしき兵隊が部下に命令を出して、俺に問い掛けて来た。
「た、助けて!殺される!」
「痛いよ〜!早く助けてくれ〜」
「喧しいな、クズ共が。兵隊さん、ソイツの怪我は俺がやった。襲い掛かって来たから、正当防衛だ」
「分かった。エントは、無事だな?取り調べで、同行して貰うが構わんな?」
「嫌だと言っても、しょっ引くつもりだろう?大人しく付いていくよ」
回復魔法で、エントの傷が完全に回復した。
兵隊の中に、モンスターテイマーが居るようで、エントと意思疎通をしている。
「班長、エントから得た情報では、此方の男5人がエントを襲撃したそうです」
「分かった。他の者を捕縛して、車に乗せろ」
「了解!」
「さて、エントの治療も終わったし、行きましょうか?」
俺は、サッサと済まして帰りたい等と考えながら、言葉を発する。
「すまないが、君達もこの車に乗ってくれ」
班長と呼ばれた兵隊が、到着したトラックを指差し言った。
「はいはい、分かりました〜」
「リョウ、どうしたの?さっきから不機嫌ね?」
「カオリ、俺は国家権力が大嫌いなんだよ。でも、矢鱈と歯向かう訳にも行かないだろ?」
俺は軍のトラックに乗り込んで、そうボヤいた。




