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セットしていたアラームが鳴って、気分良く目覚めた。
綺麗に畳まれた服が、テーブルの上に置いてある。
ルシファーの置く場所を、風呂上がりに決めた。
いつ何が有っても良いように、常に側に置く事にした。
寝る時は、ベッドの頭の辺りの棚に置く。
直ぐ手に取れる様にね。
これなら、いつ襲撃されても対応出来る。
誰にって言われると分からないが、常に警戒は必要だ。
決して、中二病だからじゃないぞ。
顔を洗い、服を着て腰のホルスターにルシファーを仕舞う。
時計を想像すると、目の前に時刻が表示される。
8時か。
ミリィさんは何時頃、来るかな?
まぁ、珈琲でも飲んで待つか。
そう思い、キッチンを起動する。
壁から、シュッとキッチンの一式が出てくる。
冷蔵庫や棚が、一体化してるね。
・・・うむ、何も無い。
そりゃそうか、買ってないもんね。
彼方此方、覗きまわっていると、部屋のチャイムが鳴った。
「おはようございます。リョウ様、起きていらっしゃいますか?」
部屋に丁度いい音量で、ミリィさんの声が響く。
「はい、おはようございます。今、行きます」
つい、返事を返してしまう。
「分かりました」
返事があった。
聞こえてるのか?
革ジャンを羽織り、扉を開く。
「おはようございます」
「おはようございます、リョウ様。ご気分、如何ですか?」
「はい、とても良い目覚めでした」
ミリィさんは昨日と変わらず、メガネをクイッと上げながら俺と話す。
「今日も、メガネ掛けてくれてるんですね。とても似合ってますよ」
「別にリョウ様を喜ばせたくて、掛けている訳じゃありません。セクハラで訴えますよ?でも、有難う御座います」
うん、何時ものやり取りだ。
とは言え、昨日からだけどね。
「朝食を、用意してあります。此方にどうぞ」
そう言って、ミリィさんが歩き出す。
俺は、後ろを歩きながら「今日は、どうするんですか?」と、聞いてみた。
「本日は朝食後、昨日の続きで街の案内と買い物です。本日も私が案内致します」
「有難う御座います。お願いします」
扉の無い、大広間に着いた。
「此方は、大食堂です。施設の職員や居住区画の住民が利用します。時間は特に決まっておらず、常に利用可能です」
へぇ、24時間年中無休なのか。
なかなか、便利だな。
「おはよー、ミリィ」
「おはようございます。ミリィさん」
「おっは〜!」
後ろから声がし振り返ると、三人の若い女の子が居る。
一人は猫耳に、長い尻尾の付いた若い獣人族の女の子。
一人は褐色で、山羊の様な角が頭に生えた、魔族の若い女の子。
一人は元気一杯で、目がくりくりした可愛い少女。
多分、ドワーフ族だろう。
「皆様、おはようございます」
ミリィさんが、メガネをクイッとする。
「メガネ?どうしたの?」
猫耳女子がミリィさんに言うと、他の娘がそれぞれ話し出す。
「本当だ、ひょっとして、河野さんからのプレゼントですか?」
褐色魔族女子が問う。
「似合ってるね〜、可愛いよ〜、所で誰〜?」
ドワーフ女子が、ミリィさんに言いながら、俺を見る。
「此方は、リョウ様です。昨日から、施設に入られました。仲良くして下さいね。そして、私の新しい彼氏です。メガネはリョウ様からの、プレゼントです。リョウ様、此方は獣人族のネアさん、魔族のゴモリーさん、そしてドワーフ族のマリーさんです」
衝撃の事実発覚!
俺、ミリィさんの新しい彼氏だって!
「嘘?!河野さんと別れたの?」
ネアさんが、すかさず聞く。
「昨日会って、すぐ恋人なんですか?」
ゴモリーさんが、モジモジしながら聞く。
「アハハ〜、河野、可哀想〜、リョウ、ヨロシクね〜」
と、マリーちゃんに言われる。
「リョウ様が、私の恋人と言うのは冗談です。今朝は気分が良いので、ちょっと冗談を言ってみました。ですが、メガネをリョウ様に頂いたのは事実です。それから、リョウ様の性癖は、女性では無くメガネです」
「ミリィが、冗談?大丈夫?具合、悪い?後、メガネ?」
ネアさんが、オロオロしている。
「まぁ、冗談ですか?ミリィさん、今朝は御機嫌ですね。メガネが好きなんですか?」
と、ゴモリーさんは笑っている。
「何だ〜、冗談か〜、本当かと思ったよ〜、リョウも、ご飯食べに来たの〜?後、メガネか〜」
マリーちゃんは、ずっとニコニコしている。
「おはようございます。リョウです。宜しく、お願いします。ご飯、食べに来ました。好きなのは、メガネの似合う女性です」
衝撃の冗談の後に、挨拶をする。
「じゃ〜、行こ〜」
マリーちゃんに手を引かれ、大食堂の中に入る。
中はかなり広く、大勢の種族が食事している。
一体、何百人居るんだ?
それでも、空席は半分以上ある。
俺達は8人掛けの席に座り、ディスプレイで注文しようとして、ミリィさんに止められた。
「リョウ様には、此方で用意してあります。御安心下さい」
他の娘達は、それぞれディスプレイで注文している。
注文を終えて、直ぐにペッパ○君が、カートを押してやって来た。
「お待たせしました。御注文の料理です」
○ッパー君が、テーブルの上に料理を置いてくれる。
ネアさんは、ステーキにライスセット。
ゴモリーさんは、喫茶店のモーニングセット的な物。
マリーちゃんは、大量のホットケーキにシュークリーム、後はジュースのディスペンサーだった。
俺は焼いた鮭に、ご飯と味噌汁、後は卵焼きと言うTHE和食だった。
ミリィさんは、珈琲を頼んで居たらしく珈琲が置かれて居る。
「リョウ様は、昨日の夕食時に、朝は和食だよね。と言っておられましたので、此方で注文しておきました」
「有難う御座います。ミリィさんの朝食は?」
「申し訳ありません。私は先に済ませております。皆様より、早く朝食を取り、仕事をするのはメイドの嗜みですので」
そっか、メイドの嗜みか。
何か頭が下がるな。




